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2015年06月30日00:49

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ビューリの虐殺 3

ガンガンガン!!

あとは単純な作業の繰り返しだった。
ひたすらアームを繰り返し金物に叩きつける。
こちらのアームがもげようが、反撃にオイルが漏れようが。
こちらのアームがもげようが、反撃にオイルが漏れようが。
こちらのアームがもげようが、反撃にオイルが漏れようが。
・・・気づいたら、相手は動かなくなっていた。
もっと正確に言うと機械人形が動かなくなっていた。

「殺った???」

深呼吸を一つ。
風が強く吹いていた。
遠くで建物の瓦礫が飛ぶ音だろうか、ガタガタと音が聞こえた。
ふと目を落とすと、操縦のためのシステムを映し出すスクリーンが異常を示していた。
初めて、大きく警報を鳴らしている事に気付く。
すっと手を伸ばして警報音を止めた。
黒騎士だったものは見事に鎧のパーツごとに散らばっており、
見事なまでに凸凹になっていた。

「やっぱり、中の人なんて居なかった」

ふっーとため息をついて自分の推論の正しさを誇るように言う。

「それはどうかな?」

戦慄した。
鎧の残骸から声が残響している。
まだ動くというのか?
戦闘は続いているのか?

「ああ、もう、戦えないから、安心していいよ」

こちらの考えを先読みしたかのように残骸は答える。
不思議と安心してしまうから不思議だ。

「さすがだよ。マクター、見事だ。
 僕が本気を出さなかったとは言え、・・・倒すとは見事だよ」

少し悔しそうだ。

「安心していいのかしら」

「少なくとも、僕が攻撃して君が死ぬ事はしばらくないだろうね」

「復活しそうな言いっぷりね。研究班に早急に渡すから」

「ああ、これが復活する事は無いと思っていいよ。
 損傷が激しすぎるからね。諦めるよ」

マクターは神妙な表情を浮かべて、髪を掻き揚げた。

「・・・・・だいたい察しがついたわ」

「理解してくれて嬉しいよ」

「化け物には変わりないじゃない」

「大丈夫さ。君も今日から化け物の一員だろ?」

黒騎士のおどけた調子はバラバラになっても変わる事はないようだ。

「嫌な褒め言葉」

むっとした態度が全面に表れてしまった。
勝ったのだ。
今はその事に安堵すべきだ。
しかし、期待は裏切られるもの。

「少し勘違いしているね。
 見たところ、機械人形は動かない。
 帰還は出来るのかい?」

初めてはっとした。
機械人形が動かなくなっている。
警報は機械の異常を知らせるもの。
詳しくシステムを開いて確認し始めた。
カタカタとキーボードを叩き始める。

「おそらく、重要と思われる駆動部や動力はすべて破壊した。
 気密性すらも危ういと思うよ」

すべてが機能していない。
コックピットの気密性すらも既に維持していない。
かろうじて、システムだけが機能しており、
最悪な事に他の機能が働かないのだ。

「そう、感染の可能性が有る。
 もっともそう簡単に感染しやしないだろうが時間の問題だ。
 更に言うと、感染地域である事は分かっていた。
 念のための処置もしているんだろう。
 ただ、それはずっとじゃない。
 救助の可能性は有る。
 ただし、限られた救助でしかない。
 そちらの戦力は調査済みだ。
 更に言うと、僕が人払いの術を行使中だ。
 ただ、ここから歩いて少しでも救助の可能性を高める事も可能だ。
 ただし、感染者との遭遇の可能性がある。
 そして、君の得意な術では対抗するのは困難だ」

聞きたくない情報をずけずけと言い放つ。
今までに受け入れたくない現実を突きつけられる事は多かった。
ここしばらくは味わう事がなかった。
目を背ける事が出来た。
久々に味わった濃厚な不快感だった。

「わ、わたしは幸せになるって決めたの!!」

「君が決めただけであって、幸せになれるとは限らない」

すぐに黒騎士は否定した。
とても現実味を帯びた真面目な言葉だった。


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