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2020年02月22日08:58

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股旅

おはようございます。座頭市です。
キューバ・ラテンアメリカを含め、世界中で尊敬されてる偉いひと。
https://youtu.be/TuvPlTeLDHo

私も全作観ました。何度も見返していますが、これ、原作は子母澤貫(しもざわ・かん)のすごく短いエッセイ。いわく、
「飯岡助五郎のところに盲目の侠客があって、しかし親分が代官の妾をさげ渡されたのに辟易。『役人の妾をもらって嬉々とするヤクザがあるものか』。そう呟き盃を突っ返し、のち妻帯して百姓になったそうな」

単にそんな逸話。
飯岡助五郎(いいおかの助五郎)も笹川繁蔵(ささがわのしげぞう)も、常州(つねしゅう。現在の茨城県)に実在したヤクザ。時は天保〜弘化の頃、ペルリ提督の黒船が来る少し前。2人のバトルは有名ですが、第1作『座頭市物語』(1962)は、それをまじえて描いたもの。

実在の座頭市は旅人じゃありませんが、映画では股旅ものにしています。寅さんみたく。

こと好きなのは第4作『兇状旅』(63年)。
賞金かかった座頭市の首を狙い、駆け出しのヤクザが襲う。当然返り討ちに。
末期の息で彼は、「国のおっ母に賞金10両を渡したかったんだ」。そう聞いた市は、彼の故郷へ向かう。
市は旅籠で働くその母に「奴はカタギで立派にやっていました。しかし誤って、私は斬ってしまいました」。土下座して謝り、自分の懐から10両を渡す。
旅籠の主は、今は引退したが元ヤクザ。かつての覇権を取り戻さむと志向す。いっぽう、いま町を仕切っているもう片方の一家は、先代亡くなり気弱な息子が2代目を継いでいる。そして旅籠の娘(高田美和)と2代目は恋仲である。ロミオとジュリエット。あるいはウエストサイド・ストーリー状態。
2代目に肩入れする大物。もちろん彼の気弱を見越し、一方で旅籠の主人を煽り、双方相討ちさせて町を乗っ取ろうと目論んでいる。ダシール・ハメット、あるいは黒澤明『用心棒』状態。

市にとってのファム・ファタール(運命の女)、万里昌代演じるおたねさんも出てきます。
ラストシーンが素晴らしいです。夏の追分、人々との別れ。祭囃子に乗せて、市の顔がだんだん変わっていく。

座頭市シリーズで評価高いのは、勝新が最も信頼を寄せた三隅研次監督(第1作や第8作『血笑旅』など)で、上記第4作は田中徳三監督。それでもこれは逸品です。
旅の哀愁別れの切なさがあり余り。エンタメとしても非常に面白い。

では市川崑監督『股旅』(ATG、1973)https://youtu.be/erGDN9jgl6A

手柄を上げて名を成し、いっぱしの渡世人になろうとする3人の若者(萩原健一、尾藤イサオ、小倉一郎。いずれも元百姓)が、滅んでいく物語。ジャパニーズ・ニューシネマです。

そして最後に帰ってくるのは、結局このあたり。
◆木枯し紋次郎 『誰かが風の中で』 https://youtu.be/HPo5yTbpcKs

股旅ものが近頃ないのは、いったいなぜなんだろうか。ロードムービーにして旅の重さ、社会からはじかれた人々の悲哀を表す格好の物語なのに。だから俺らを魅了しやまないのに。

まさか暴対法? ありえねー。
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