クルマ0307 ドイツの宝石(MAYBACH DS8)

2009年3月末〜4月初に六本木ヒルズで開催された第2回東京コンコース・デレガンスには1936年式MG PBエアライン・クーペで参加したのですが、季節外れの大型台風の直撃を受けて散々な目に遇いました。
翌2010年7月にお台場で行われた第3回は4月26日深夜にレストアが完了、4月27日にお披露目(https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1473601088&owner_id=9783394&org_id=1464541122参照)したものの直後の5月1日にオーナーがお亡くなりになった(https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1475647530&owner_id=9783394&org_id=1474938544)1930年式ラリーABC(本稿0235)で、オーナーの娘さんと参加しました。この時はメチャクチャ暑くて 参りました。
いずれもリーマン・ショックからそんなに年月が経っていなかったのにバブリーで、神戸の貧乏人は隅っこで目立たないようにしていました。

この東京コンコース・デレガンス(Concours d’élégance、フランス語)は、「欧米では権威ある品評会(イタリアのヴィラ・デステやアメリカのぺブル・ビーチ)が行われているのにどうして日本には無いんだ？｣と感じていたPaul Goldsmiths(ポール・ゴールドスミス、東京在住のイギリス人)が主導して開くようになったと本人から聞きました。

第1回は2007年10月に六本木の東京ミッドタウンで開かれ、そこに1932年式のマイバッハDS8(ドイツ)が展示されていました。


マイバッハというクルマは、本稿0268で記した｢世界初の4輪ガソリン車｣ダイムラーを開発したGottlieb Daimler(ゴットリーブ・ダイムラー)の右腕だったWilhelm Maybach(ウィルヘルム・マイバッハ)が息子のKarl(カール)と共に設立したMaybach Motorenbau GmbH(マイバッハ・エンジン製造会社)か製造した高級車です。この会社はZeppelin(ツェッペリン)飛行船にエンジンを供給していたことから、会社のフラッグシップたる最高峰のクルマは｢ツェッペリン｣という通称で呼ばれました。

DS8は究極のツェッペリンです。フロント・リヤとも1/2楕円リーフ・スプリングで支えられたリジッドのアクスルを持つ梯子型シャシーに搭載されたエンジンは、水冷V12OHC7977ccから200馬力/3200rpmを絞り出しホイールベース3734mmの小山のような車体を106mph(約170km/h)で走らせました。車重は3トン近くあり(ボディによって異なります)、運転するには特別な免許を取得する必要がありました(ドイツでは重量2.5トン以上のクルマには重量車運転免許が必要でした。現在は3.5トン以上となっています)。

このエンジンに組み合わされていたギヤボックスは何と8速でした。しかし8組のギヤがすべて常時噛合っており、音もなく選んだギヤに切り替わる半自動式で、クラッチを必要としません(クラッチを踏むのは発進・停止の時のみ)。
シフトする度にゴリゴリ音をたてるのを嫌がった当時のお金持ちにとって、このギヤボックスは福音と言えたでしょう。流石はマイバッハ・ツェッペリン！
この頃の高級フランス車の主流が3速だった(なるべくギヤチェンジしなくて済むよう)のとは対照的です。

DS8は1929〜30年のDS7の後継車種として誕生しました。DS7も6971ccのV12エンジン(150馬力)を搭載したツェッペリンと呼ばれたフラッグシップでしたが、1930年にDS8に置き換わって1939年まで少数(100台と言われています)生産されました。ナチにより。時代を感じさせます。

工場出荷ボディは4ドア・サルーン、2ドア・カブリオレ、7ドア・カブリオレかありましたが、多くの場合は顧客はシャシーを好みのコーチビルダーに送らせて特注ボディを架装させました。
2012年8月12日にデンマークで行われたオークションに登場した1938年式DS8 ロードスターもそんな1台です。これは130万ユーロ（当時のレートで約1億3千万円）で落札されました。

とにかく高級この上ないドイツの宝石です。本稿0294で取り上げたアウストロ・ダイムラーと肩を並べるでしょう。