クルマ0260 94cc2.5馬力(TROJAN TROKART/TROBIKE)

本稿0258の文末に書いたように、イギリスのTrojan Cars Ltd.(トロージャン自動車)は1960〜66年にドイツのハインケル・カビーネをライセンス生産しました。そして同時期に僅か94ccの2サイクル・エンジンを搭載した小さな乗り物も2種類作っています。
今回はこれら極小のトロージャンについて。

イギリス屈指の老舗自動車会社トロージャンは、1959年にイタリアのランブレッタ(スクーター)の販売権を持っていたLambretta Concessionaires Ltd(ランブレッタ販売株式会社)に買収されました。そして大手の独立企業だったトロージャンを中核としてトロージャン・ランブレッタ・グループが組織されました。

それより少し前、アメリカでは芝刈機用の小さなエンジンを積んだゴーカートがブームとなり、上述のトロージャン・ランブレッタ・グループの親会社だったアメリカ・アイオワ州のClinton Engine Corporation(クリントン・エンジン会社)も空冷単気筒2サイクル94cc(2.5馬力)エンジン(ボア54×ストローク41mm)の製造販売で潤っていました。
イギリスでもこのエンジンを積んだゴーカートが"TROKART(トロカート)"の名称でトロージャン・ブランドで1960年から売り出されました。税金が安いキット形態はわずか£25の過ぎず、イギリスの若者は熱狂したと言います。

そして、このエンジンを利用した"TROBIKE(トロバイク)"も翌年売り出されました。これは、特命を受けた高級官僚の日常移動用として第二次世界大戦中の1942〜45年に使われた1人乗りのwelbike(ウェルバイク)を小さくしたホイールベース940mm、全長1219mmのミニバイクです。小さくて可愛いのでイギリスにはモチロン、日本にも熱狂的なファンがいます。


キット形態で£35で販売されましたが、二匹目のドジョウはいなかったようで、1961年11月〜1962年3月の短い期間に648台作られただけです。生産台数が僅かなので売りに出ることは滅多にありません。よしんば入手できても、日本では普通自動二輪免許(単車の中型免許)が必要な上、部品の入手が困難で現実的ではありません。