mixiユーザー(id:975494)

2020年10月16日14:25

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分煙

 少しばかり忙しかったりして、ちょっと読書をサボっていたが先日ばかり本屋を賑やかしてきた。

  「慰安婦問題の決算」 秦郁彦・著
 何となく本棚にあるのを見て、秦教授の名前が見えたので手に取った、という流れ。
 新作かな、と思ったが2016年頃のモノらしく、1〜2年くらい前に総決算的なのを出されていたのよりも前のヤツと思う。

 色々と思うトコロはあるが、近代史に関して、文学的には阿川弘之先生、史学的には秦教授の影響下にあるのかな〜、と思っている。
 特に、秦教授は云うトコロの「特定の個人、乃至組織による秘密謀議で合意された筋書き通りに歴史は進行したし、進行するだろうという見方」と定義できる陰謀史観について手厳しい批判の態度を執っている。
 私も同じように陰謀史観というものに対して嫌悪感を抱いている。
 これらの解釈は物事を都合良く見積もる事で出来上がっていると感じられるし、そもそも現実の出来事の殆どが、一本の筋道で綺麗に説明できないのが当然であるにも関わらず、複雑怪奇な国際政治や軍事の顛末を結果から逆算して受益者の策謀に集約できると信じる姿勢は実に粗雑な事と思う。

 それからニュース記事等で、今の社会は19○○年当時の○○に似ている……という表現を僕は嫌っていたり、セコい批判のための手段と断じて概ね軽蔑しているのだが、秦教授も本書に於いて……「そういう表現は使わないと決めている」……との由。
 この文中、日本の曲がり角……という表現について、曲がり角だから90度、4回出たら元の場所に戻った事になる、との皮肉を入れているのは苦笑してしまった。

 面白かったのは、教授が本屋でどんな本を手にするかについて、著者の経歴を確認している、との由であり、これもまた私が必ず行っている事である。
 と、こうして見ると私自身の歴史に対する態度について、大なり小なり……ではなく、大きく影響を受けているのだと妙に納得してしまった。
 或いは、本を手にする時の経歴の確認なんかは秦教授の、他の本でも読んで学んだやり方なのではないかと自ら疑っている(記憶には無いがあり得ない話しではないか??)。

 斯様に史学的な立場、視点に於いては概ね賛同する立場なのだが、本書の題名にかかる慰安婦に関して、安倍首相が韓国と結んだ「慰安婦合意」について、その効果、効力について懐疑的な立場で先行きを不安視していたのが意外であった。
 私はこの合意について、特に日記には残していないが、当時から国際世論に訴える事で韓国に枷を嵌める目的であり、韓国がコレを無視してくる事は当然の前提、その先まで見据えたウマい遣り口と感心していた。
 勿論、国家外交の難しさとその表裏を熟知している教授が、そうそう上手くいくワケが無いと疑う方が正論なのだろうが、策を知るの故にただの棒球をも一癖のある魔球と捉えてしまったのかも知れない。

 いずれにせよ、秦教授の此の手のエッセイはただの読み物としても面白く、少しばかり古くはあるが、今回のモノも充分に愉しめた。
 まぁヘビースモーカーの立場から禁煙法やら分煙についてガミガミ書いている事については、素直に笑いながら読ませて頂いたのであるが……。
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