デンマークは世界で最も所得水準の高い国の１つで、人々や子供は金髪・青い目で、中世風の街並みも美しい。しかしプログレは不毛の地であって、21世紀の現在ほとんど存在しないようだ。そんな国でも、歴史をたどれば、化石のように頑張ってプログレを表現しようとしたバンドたちがいた。そしてそのサウンドは、全体的にのんびりしていて牧歌的なのだ。（注：2021年8月27日に�Г魏�訂）
・ 曲 バンド アルバム
�� Stretched out hands / Zaragon [ No return 1984 ]
ザラゴンは素晴らしい少年声のマーティン・ニエルセンをヴォーカリストに擁する5人組で、技巧的な演奏、変転する楽曲と相まって、私の最も好きなタイプのシンフォ・バンドだ。ジョン・アンダーソン似のヴォーカルだが、少し暗めで、コーラスがない。このため、イエス・タイプというより、スイスのクレプシドラに似ている。1984年という難しい時代に、1枚だけデンマークの至宝というべきアルバムを残した。
�� Princess /The Old Man & The Sea [ The Old Man & The Sea 1972 ]
オールドマン＆ザ・シーは、ヘミングウェイの「老人と海」をバンド名にした７０年代オルガン・ハードの5人組。オレ・ヴェデルのハイトーン・ヴォーカルのほか、３声によるコーラスがノリノリで進行する。骨太のコーラスとオルガン、そして粗削りなギターも魅力。広がりのあるオルガンの音響が、どこまでも広がる荒々しい大海原を想起させる。
�� Anagrams / Etcetra [ Fin de siècle 1999 ]
世紀末に輩出したエトセトラは４人組で、ヴォーカルとピアノがミカエル・ミュンヒ・ハンセン。夢見るような空間いっぱい壮大キーボードから、タイトなギターとドラムスに展開。さらにジャズ風味のビブラフォンまで出てきて、少しだけ唸るギターとドラムスの掛け合いで無調的な部分もある。デンマークに珍しいしっかりしたシンフォだ。なお、カナダとドイツに同名バンドがいる。
�� Iron duke / Iron Duke [ First salvo 1974 ]
７０年代のアイアン・デュークは、メンバー４人中３人がモーグを弾くことができるＥＬ＆Ｐタイプのバンド。ハンス・レーセンのヴォーカルは爽やか中音域で、ポップかつメロディアス。しかし８分に及ぶ楽曲を壮大に展開する。ギターは細く長く引っ張るキャメル・タイプで、デンマークのバンドにはこのタイプが多いようだ。
�� Piece (of my heart) / Hair [ Piece 1970 ]
１９７０年という早い時期に出たヘアーは、バンド名や「ピース」というアルバム名から分かるように、サイケデリック時代の申し子だ。サウンドは、オルガンを配したアート・ロック。４人のメンバーが全員ヴォーカルを取る。この曲では導入部からオルガンとサイケなギターが闘争し、それなりにハードなのだがどこかのんびりしている。ポロンポロンと弾かれるピアノに少しジャズ感覚もある。
�� How I love you / Midnight Sun [ Midnight dream 1974 ]
これも７０年代のミッドナイト・サン。専任ヴォーカルのフランク・ラウリドセンのほか、木管楽器の専任奏者もいる６人組。短い曲が多くて、ポップ・バンドがオルガンを入れてプログレになったようなサウンドだが、音作りはそれなりに凝っている。間奏で長く引っ張る泣きギターが切々たる情感を示し、ヴォーカルも哀愁たっぷりだ。
�� デンマーク領グリーンランドは 人口５万人強。こんな辺境の地にもプログレがあると言うから嬉しい限りだ。ピトゥットは、５人組でイサバラク・ペトルッセンがヴォーカル。曲調は土地柄から想像される寒々とした冷涼なものとは正反対で、どの曲もむしろほのぼのと温かい牧歌的なものだ。ヴォーカル主体のポップスとも取れるが、キーボードが活躍しているからプログレと言って良いだろう。この曲は「To you」という意味だというが、バンド名も曲名も現地語らしいことなど希少価値が大きい。イヌイット語なのだろうか。
�� Wide open N-way / Day Of Phoenix [ Wide open N-way 1969 ]
１９６９年と最も早いプログレ創世期に出たデイ・オブ・フェニックスは、６人組。ツイン・ギターの編成のほか、ゲストにオーボエ、ダブルベース、ピアノ奏者が参加している。上ずり系のヴォーカルに続き、サイケデリックなギター。やがて無調的な演奏、「ムーンチャイルド」みたいなビブラフォン、ギター・ソロと続き、何がやりたかったのか散漫だが、これがあの時代のオリジナリティだったのだ。
�� Little things / Ache [ De homine urbano 1970 ]
エイクは、７０年代に４枚のアルバムを残した４人組。ＥＬ＆Ｐタイプのオルガン・ハードで、３人がヴォーカルを取る。キーボード奏者はビブラフォンも演奏する。ファースト・アルバムではＬＰレコード片面ずつに２曲だけで、この曲も１９分の大曲だが、オルガン・ハードにしてはやたらとのんびりしている。これはデンマークの国民性なのだろうか。
�� It’l mary / Tinkicker [ the playground at the edge of the abyss 2011 ]
最後になってようやく登場する２１世紀バンドは、プログレ・メタル４人組のティンキッカー。私はうるさいプログレ・メタルは避けたいのだが、このバンドはメロディーが良い。よく通るシャウト系のハイトーン・ヴォーカルに、コーラス。爆発するギターは、それほど暴力的ではなくて、間奏のギターのバトルも楽しく聴くことができる。
[次点] Sunday morning / Savage Rose [ Your daily gift 1971 ]
デンマークで最も有名なプログレ・バンド、サヴェージ・ローズを挙げないわけには行かないだろう。私は１９７０年、子供の頃にラジオで聴いた懐かしいバンド。しかし女性ヴォーカルというだけでなくて、それがゴスペルというか演歌というか、私の最も嫌いな歌い方なので、申し訳ないが次点になった。ジャズ・ヴォーカルが基本になっているのだろうが、それなりにポップなセンスもある。演奏もうまいし、歌もうまい、オルガン入りのアート・ロックだ。
〇その他候補にしたバンド
Behind The Curtain,(以下はChristiana V.A.所収のミュージシャン)Sebastian med Peter Thorup, Djurslandsspillemaendene, Bifrost, Hyldamer, C.V.Jorgensen, Secret Oyster, Totalpetroleum, Gnags, Kim Larsen, Spillemaendene, Osiris, Rode Mor, Det Internathionale Sigojner Kompagni
〇改定前の��
My lady / Noen Rose [ Two 1993 ]
９０年代のネオン・ローズは５人組で、ヴォーカリストとベーシストがメロトロンも弾く。１０００枚の限定版で、自主制作らしい。フォーク・ロック調の牧歌的なラブ・ソングから始まって、一転タイトでヘヴィーな早弾きギターの局面になる。ここだけ聴くとレッド・ツェッペリンみたい。張り上げ型のヴォーカルはメロディーが最高。
（注）すみません。購入時にＣＤのラベルにデンマークと表示されていたのですが、マイミク様の調査によりスウェーデンのバンドだったと判明しました。
（参考）フィンランドの白夜な曲10選（2016年7月10日）
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1954007602&owner_id=9666295
ログインしてコメントを確認・投稿する