ゴールデンウィークにバルト3国に行ってきた。昔から小国には興味があった。歴史的経緯や言語の違いがあって、小国のままで現在まで存続している国々。そして小国で軍事力が強くないからこそ、音楽や芸術を重視している。今回はＥＵ28か国の中で、人口500万人以下の小国に焦点を当てて、10選してみた。
・ 曲 バンド アルバム
�� Voice of outside / Different Light [ The burden of paradise 2016 Malta ]
人口42万人という地方都市のようなマルタ。その小国にこれほど素晴らしいシンフォ・バンドが輩出したというのは、全く奇跡のような気がする。英語で歌う曲群は、ともかく若々しくて爽やか。コーラスもみずみずしくて、演奏も完璧。泣きたくなるほど美しいメロディーに追い打ちをかける泣きギター。曲によっては少しメタルな爆音も入って、現代シンフォの最高峰だ。
�� Ordinary man / Suppers Ready [ Listen to the pictures 2000 Luxemburg ]
ルクセンブルグ（人口51万人）のサパーズ・レディは、ジェネシスの曲名をバンド名にしているが、サウンドは晴朗で、ヴォーカル・スタイルを含めてむしろジョン・ウェットンに似ている。フルート奏者を含む6人組で、要所でのフルートが刺激的。「靴はぴかぴか、車は日本製。スーツはパリ製だが中古。普通のヨーロッパ市民だけど夢がある。妥協はしない。」
�� The sea / Holy Lamb [ Salt of the earth 1999 Latvia ]
ラトビア（人口225万人）のホーリー・ラムは、ヴォーカルとギターのエイガーズを中心とする5人組。ヴォーカルは、ジョン・アンダーソン張りのハイトーンなのだが、雰囲気がとても暗くて、唱法はむしろピーター・ガブリエル風。ピアノに乗せて長く引っ張るギターが延々と続く17分の曲で、キーボードが空間を占めていない分、音圧が薄い。
�� Still life 〜 Rockin’ tonight / Linnu Tee [ Linnu Tee 1989 Estonia ]
人口134万人しかいないエストニアは、音楽国家だ。ソ連の時代に歌の祭典で独立を主張していた。リンヌ・ティーは1989年という、まだソ連の時代のバンドだが、英語で歌う。イエスに影響を受けたスピード感ある演奏とコーラスだが、演奏の整合感は今ひとつ。ややしわがれ声のヴォーカルはメロディアスかつスリリングだ。
�� Looking back and forward / TNNE [ The clock that went backuward 2014 Luxemburg ]
こちらはルクセンブルグの現代バンドＴＮＮＥ。ルクセンブルグは世界最高水準の所得を誇る金融国家だけあって、プログレも洗練されている。少しシャウトするヴォーカル、途中で空間一杯に広がるキーボード・オーケストレーション、少しメタルの入ったギターなど、現代シンフォの最良のケースとなっている。パトリック・キーファーのヴォーカルは、叙情的な曲多数。
�� A recollection of dreams / No Name [ 4 / 2006 Luxemburg ]
こちらもルクセンブルグのノー・ネーム。この10選でルクセンブルグのバンドが３つ。どれも完成度が高い。シンフォ大国オランダ・ベルギーに挟まれて、この小国でもシンフォが盛んなのだろう。�イ�8年前だが、ヴォーカルとキーボードは同じ。こういう人材が支えているのだろう。ややハイトーンでシャウトに次ぐシャウト。哀感たっぷりだ。
�� Sacrilegium part 10 / Devil Doll [ Sacrilegium 1992 Slovenia ]
デヴィル・ドールは、ヴォーカルのミスター・ドクターが中心となっていて、スロべニア（人口213万人）・イタリア混成のメンバーによる8人編成。バンド内にヴァイオリン奏者、チェロ奏者がいて、ピアノ・キーボード・オルガンとキーボードは3人。それで壮大なオーケストラを表現し、サウンドはゴシック・ホラーだ。叫びやナレーションが次々と展開し、恐怖を催す光景が広がる。
�� Obcaj mi proljece / Drugi Nacin [ Drugi Nacin 1992 Cloatia ]
クロアチア（人口440万人）のドルギ・ナシンは、1975年から80年代初めまで活躍し、92年に再結成。当時はユーゴスラビアの頃だ。ポップな楽曲にフルートとキーボードが絡み、プログレそのものだが、当時のことなので現地語で歌われている。森の中にいるような爽やかさだ。かなりハードな曲もある。
�� Tild ( the pond ) / Mess [ Kusi eneselt 1975 Estonia ]
エストニアのメスは、1970年代にシンセサイザー奏者スヴェン・グリュンベルグによって作られたバンド。スヴェンは当時金髪の貴公子といった雰囲気で、かなりキース・エマーソンを意識した前衛的な奏法を展開。しかし彼はヴォーカルも歌う。2枚組大作であって、エストニアの音楽好きの国民性を伺わせる。
�� Sun set glow / Inderek Patte [ Cinemanic 2017 Estonia ]
同じくエストニアのインデレク・パッテは、現代のマルチ奏者だ。キーボードのほか、ヴォーカル、ギター、プログラミング行い、更に6人のゲストが参加している。キーボードはヴァリエーション豊かなのだが、インストルメンタルなのが私には不満。1曲だけこの曲は彼のヴォーカルが入っていて、これが魅力的。のびやかで遥かな彼方に憧れるようなロマンチックな曲だ。
[次点] Anthidolorosum / In Spe [ In Spe 1982 Estonia ]
エストニアには70年代からプログレがあるが、こちらは82年のイン・スぺ。メンバーは8人がクレジットされていて、キーボード奏者は女性1人を含み、なんと4人。このほかフルート・リコーダー奏者、ベース、ギター、ドラムスの４人。すごい編成だった。現地語で歌われる曲は民族っぽいメロディーも含み、ユニークだ。
[番外] The man outside / Lord Of Mashrooms [ Lord Of Mashurooms 2002 Monaco ]
モナコは人口3.6万人。タックスヘイブンの独立国だが、外交・軍事の一部をフランスに委ねているためＥＵ28か国の1つとは数えられていない。そこで番外にしたものの、ロード・オブ・マッシュルームズは、ポンプ系でノリの良いサウンドを奏でる5人組だ。拍子変化あり、途中幅広いキーボードも出てきて
ドラムスはじめ演奏もうまい。
○その他候補にしたバンド
Edhels(Monaco),Kolli Vipuu(Estonia), Pantokratoor(Estonia),
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