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2020年02月20日00:55

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ねじまき鳥クロニクル (東京芸術劇場プレイハウス)

2月13日観劇。
https://horipro-stage.jp/stage/nejimaki2020/

原作本は間宮中尉が回想する皮剥ぎの場面を読んでから、
しばらく肉が食べられなかったほど強い衝撃を受けた作品。
この象徴的な想念の世界がどう表現されるのか、
興味を持って観たけれど、期待以上に面白かった。

<演出>
舞台のどこからどのように何が出てくるかわからない
まるでからくり箱のような世界。
井戸の穴はふっとあらわれ、すっと消える。
壁は自在に移動し、ひとは座ったソファの隙間からするっと失せる。

以前「100万回生きたねこ」(再演)を見ているので
インバル・ピント演出の雰囲気は分かっているつもりだったけれど、
村上春樹作品の奇妙な想念世界を具現化するのに
こういう奇抜な手法はぴったりだ。
額縁の中に展開する不思議なおとぎ話のようで、
一瞬も目が離せない。

主人公一人を二人で演じるにとどまらず、
同じ衣裳と髪型のひと(トオルもクミコもクレタも)が
あとからあとから増幅して波のようにうねったり、
舞台道具がするするとかたちを変えたり、
照明で雰囲気がぱっと変わったり。

プールや井戸からわき出す水を布であらわす手法は
歌舞伎の波布のようで楽しかった。
こういう古典芸能のシンプルで効果的な見せ方に
通ずるものが感じられる。

ダンサーたちの動きのしなやかさは驚異的。
傾斜のある八百屋舞台で皆動くのは大変だったろうに、
微塵もそんなことは感じさせない。
成河さん大知さん(どちらもトオル役)の
自問自答するような、絡みあうダンスも面白い。
ひとの身体はこんなに折り畳んだり、お互いに乗っかったり、
潜り抜けたりできるものなんだと感嘆してしまう。

綿谷ノボルのクレタ凌辱場面も、
子どもが玩具をもてあそぶようなすごいインパクト。
怖いようだけどちょっと滑稽でもあるような。
音楽の大友さんによる力強い打楽器の音も相俟って、
その迫力に圧倒された。

<役者たち>
渡辺大知@岡田トオル
井戸に入るまでのトオルを主に演じる大知さんは、
マイペースで一般社会からはほっとズレているような、
春樹作品の主人公の雰囲気にとても似合っていて、
ああ、トオルだなと素直に納得できた。

成河@岡田トオル
成河さん演じるトオルは、
井戸の中から奇妙な世界に行ってしまう。
ミステリアスな雰囲気の中で、
視線を惹きつける強い吸引力を感じた。
やっぱり動きがしなやか!

吹越満@間宮
あの間宮中尉の長い語りを、
刻々と変わるポーズで、逆さまにまでなりながら
淡々としっかりと聞かせる吹越満さん、さすが。
この場面は上から下がっている電灯の紐と笠の角度を変えつつ、
影絵のようにあらわす演出も印象的だった。

門脇麦@笠原メイ
ちょっと中性的でドライな雰囲気があって、
さばさばした口調が心地よい。
こういう大胆で独特で、でも正直なものの言い方は
「ノルウェイの森」の緑を思わせる。
彼女の演じる緑を観てみたくなった。

成田亜佑美@岡田クミコ
心の闇を抱えて姿を消すクミコは
ノルウェイで言えば直子の立ち位置。
凛としつつ繊細な感じで適役。

徳永えり@加納クレタ/マルタ
舞台で拝見するのは初めて。
帽子、眼鏡、会話のセンテンスの区切りが風変わりな姉マルタと、
金髪で白っぽいワンピース、儚げな感じの妹クレタは、
見た目がまるで違うので、同じひとが演じているとは思えなかった。
何にでも化けられる透明感のある人なんだな。

銀粉蝶@赤坂ナツメグ
ホテル受付のくたびれた老婦人という役どころだけれど、
銀粉蝶さんが演じているとそこはかとなく色香を感じる。
安心して観ていられる安定感。

大貫勇輔@綿谷ノボル
背が高くすらっとして姿は良いけれど、
何を考えているか分からない無表情が怖い。
紳士然としたノボルの不気味さが感じられた。

松岡広大@赤坂シナモン
台詞なしで静かでひっそりとした雰囲気。
背丈はあるけれど、少年らしくて好もしい。
顔を白布で巻いた「顔のない男」にも
清潔感が漂っていてよかった。

さとうこうじ@牛河
あくの強い、押しの強い、ちょっと嫌味な感じ。
あ、牛河だ、確かに牛河だ!と思った。
やや小柄な背丈も含めて、この独特の個性は武器ですね。
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