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2019年11月17日13:20

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「地球防衛軍 苦情処理係」感想

鴻上尚史さんの最新作「地球防衛軍 苦情処理係」というお芝居を見ました。現代の東京が舞台。東京に現れる
巨大怪獣を倒すべく創設された地球防衛軍。その戦いの中で、地球防衛軍のミサイルで自宅が破壊された等、
市民からの苦情や補償の問合せ等を受付ける苦情処理係の面々が主な登場人物。被害者としての「正義」を
主張してくるクレームの数々に対応し悩まされつつ、各々の登場人物達の「正義」と現実との狭間で葛藤する
姿が描かれています。時代の風潮を的確に捉えつつ、そこに鋭いメスを入れ、笑いやダンスや歌を交えながら、
時代の荒波に成す術なく流され絶望に打ちひしがれても、僅かな希望を見出し歩き始める、鴻上さんの
真骨頂が十二分に発揮された作品だと思います。もちろん見応えある人間臭いドラマも交じっているため
「正義」云々という問題に答えは出せなくても、登場人物たちそれぞれに十分に感情移入できる
名作だと思います。パンフレットのクレジットに「協力:円谷プロ」の名前を見つけました。
お芝居を見れば、ここが協力の場面かなあと何となく類推できますが、上原正三さん・金城哲夫さんといった
円谷プロの黎明期に活躍された方々が正面から向き合った「正義とは何か」「何のために戦うのか」という
問いを、令和の時代と向き合っている鴻上さんが受け継いだという見方も出来るのかなあと思いました。
物語は舞台演出の要素を十分に取り入れてますが、「特撮映画化も出来るんじゃね?」とも思ってしまいました。

主人公を演じた中山優馬さん。今回の役は、様々な人が主張する「正義」を一身に受け止めなければならず、
その間で葛藤する人間味と、ヒーローとしての凛とした一途さを併せ持つ難しい役を見事に演じていたと思います。
主人公の同僚を演じた原嘉孝さん。空回りする場面の面白さを引き出す演技と、自分に降りかかった問題に
苦悩する姿の対比が良かったと思いした。大高博夫・矢柴俊博さんのおじさんコンビの茶目っ気たっぷりの演技と
それに比例するような闇の演じ分けが良かったです。そして、ヒロインを演じた駒井蓮さん、一途な強さと
それ故の脆さを併せ持つ難しい役を、熱く演じていました。演劇は2作目とパンフに書いてありましたが、
ヒロインとして主人公演じる中山さんに十二分に渡り合っていました。このお芝居の
登場人物の中で一番印象に残り、感情移入できたのが駒井さんが演じる役でした。この二人のやりとり、
大高洋夫さんがパンフレットのコメントで「ダンとアンヌを彷彿させる〜」とおっしゃっているのも
十分に分かります。円谷特撮が好きな方も、そうじゃない方も、見ていて切なくて胸が痛くなるけど、
笑えて熱くなれて最後には勇気をもらえるお芝居だと思いました。
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