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2019年11月23日05:39

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魔法の真珠

魔法の真珠/フロウライト

瞑想中に浮かんだ物語をシェアします。

  ☆
一頭の雌イルカが海を泳いでいます。
彼女は、汚染された海を癒すための、魔法の真珠を探して、
海をさまよっていました。

海が穢れた時、魔法の真珠が、その穢れを払い、海水を浄化してくれる。
それは、イルカたちの間にある伝説でした。

でも、広大な海の中で、
どうやって真珠を探せばいいのでしょう?
彼女は途方にくれてしまいます。
疲れ果ててしまいます。
そして、自分のからだが、
段々と汚染物質によって、破壊されていくのを感じています。
彼女は思います。
「私は、どうなってもいい、でも、みんなを助けるためには、
魔法の真珠が必要なの。」
そうやって、勇気を振り絞っては、
海を探しまわりました。
でも、魔法の真珠はどこにも、みつかりません。

雌イルカは、
今まで行ったことのない、
深い深い海の底に、
暗い暗い海の底に、降りていきます。
それは、とっても恐い体験でした。
でも、彼女は、そうするしかなかったのです。
他の場所は、もうぜーんぶ探しました。
後は、海の底を探す下なかったのです。

自分の怖れと水圧の重苦しさが、彼女の心を潰してしまいそうになります。
「なんで、こんなことしてるんだろ?
こんなに怖いのに、こんなに苦しいのに、
なんで、こうするしかないんだろう?
別の道はないの?
もっと、楽な道はないの?
こんなの耐えられない!
もう、探すのなんて、やめちゃおうかな。
あきらめて、みんなで、死ぬしかないのかな。」
そう思いながらも、彼女は、
深くて暗くて、重くて冷たい海の底へと降りていきました。
そして暗い暗い海の底に、辿り着きました。
その暗い暗い世界で、
何かがうごめいています。
雌イルカは恐怖に支配されてしまいました。
からだ中が、粉々になりそうな恐怖でした。
雌イルカの前に現れたもの、
彼女の前でうねうねと動いているもの。
それは巨大な闇の魚でした。
その闇の魚は魚というよりは、どちらかといえば蛇のようでもありました。
長細い胴体と尻尾を持ち、
海の底で、ウネウネとその長いからだをくねらせながら、
雌イルカに強い敵意のようなプレッシャーを与えてくるように感じました。

雌イルカは、勇気をふりしぼりました。
「私は、魔法の真珠を探しています。
その在り処を、知りませんか?」
闇の魚は、今にも、雌イルカを呑み込みそうな大きな口を開けて、
語りはじめました。
「よくきた。
ここで俺様に食われろ!
魔法の真珠をみつけて、上の世界へ戻るのは、その後にしろ!」
どうやら巨大な蛇魚は、雌イルカのことを食料にしようとしているみたいです。
「あなたに、食べられるのは嫌です。
あなたは、真珠の在り処を知っているのですか?」
「知っているとも、
その真珠も喰いたいものだが、さて、どうするか。」
「どうか、その真珠の在り処を教えてください。」
「教えたら、喰わせてくれるのか?
おまえも、その真珠も、うまそうだ。」
「それは、ダメです。
魔法の真珠は、この海を、もとの海に戻すために、使うのです。」
雌イルカの言葉を聞いて、闇の巨大蛇魚は、
からだを更に大きくうねらせました。
「いいことを教えてやろう。
その真珠を喰えば、俺様は、もっと巨大な力を手に入れることができる。
そうしたら、おまえの願いを叶えてやれるかも知れない。」
「それは、どういうことですか?」
「俺様が力を得たなら、この海をもとに戻せるということだ。」
「それが、もし本当なら、
私が真珠をみつけて来ますから、
在り処を教えてください。
私を食べてしまっては、
真珠をみつけにいくことができなくなってしまいます。」
「いや、まずは、おまえを喰う。
おまえも、俺様に喰われれば、真珠の在り処が分かる。
これで、どうだ。」
「でも、それでは、探しに行けませんよ。」
「探す必要はないのだ。
俺様に喰われることで、おまえは真珠をみつける。」
「そんなこと、信じられません。
あなたは、私を食べたいばかりに、嘘をついているのではないですか?」
「俺様の言葉を疑うとは、失礼な奴だ。
人に尋ね事をしておいて、
親切に答えてやった俺様の行為を無駄にする。
そんなことだから、おまえさんは、
真珠をみつけられずに、さまよっているんだ。」
「…。」
雌イルカは、
しばらく考えてから、闇の巨大魚に向かっていいました。
「本当に、あなたは、
私を食べた後、真珠を手に入れて、
この海をもとに戻せるのですね。」

その言葉を聞いて、
巨大蛇魚のウネリがピタリと止まりました。
そして、これまでとは変わって、
穏やかで、優しく力強い口調で、巨大魚が言いました。
「約束しよう。
俺様の力を、この海の回復のために使おう。
それで、俺様の力が尽きるかも知れない。
でも、昔のような、美しい海が戻ってくれれば、
俺様も、満足だ。」
その言葉に、雌イルカは、心を決めました。
「分かりました。私も、同じ気持ちです。
どうぞ、私を食べてください。」
 闇の巨大蛇魚は、大きな口を空けて、
雌イルカを一呑みにしました。

すると、どうでしょう。
黒い巨大なからだが、淡く白く光はじめました。
そうして、巨大なからだは、少しずつしぼみはじめ、
小さな一粒の真珠になったのです。
闇の巨大蛇魚に呑み込まれたはずの、雌イルカは、
その真珠をぼんやりとみつめていることに、ふと気づきました。
「夢だったのかしら?」
雌イルカが、そう呟くと、
目の前の真珠が声を発しました。
「私は、魔法の真珠です。
私は、ずっと、この海を浄化してきたのです。
でも、海の汚染が進み、私の浄化力の限界を越えてしまいました。
あの黒いからだは、汚染された海を浄化しすぎたために、生じたものです。
この形を取り戻すために、
あなたの生命力と精神力が必要だったのです。
あなたのおかげで、また、もとの真珠の姿に戻れました。
これで、また、海を浄化することができます。」
「もう、だいじょうぶなの?
また、無理をして、あんな姿になってしまうんじゃないの?」
「もう、だいじょうぶです。
あなたの力とつながったことで、
私は、より大きな力を手にしました。
ほら、もう、こんなにどんどんと、海が浄化されていきます。
素晴らしい、ウットリしちゃいます。」
真珠の周りに淡い光が溢れ、その光が、海水を浄化していくのが分かります。
「さあ、みんなのもとへ、帰ってください。
そして、浄化された海で、みんなと喜びを分かち合ってください。」
雌イルカは、魔法の真珠に別れを告げ浮上していきました。
彼女の心は、喜びに溢れていました。
そして、はやく、みんなに会いたいという気持ちでいっぱいでした。
雌イルカが、浮上していくと、
その浮上に合わせて、雌イルカの周りの海水が、光を放って浄化されていきます。
そうです。
雌イルカにも、浄化の力が宿っていたのです。
 探しているものが、本当は、自分の内側にあった。
雌イルカは、その驚きと共に、みんなのもとへと、帰っていきました。

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