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2016年10月30日00:16

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清野栄一『デッドエンド・スカイ』

うちの本棚にある相方の本を借りて読んだ。家にある本はおおまかにはわたしがミステリと乙女もの、相方がSFとIT関連と社会問題関連と分かれているが、あと半分は二人とも読む共有の文学書である。ふだんはじぶんの本を読むのが忙しくて読書範囲を広げないんだけど、今回は清野さんについて相方がいろいろしゃべるし、うちにある本の解説もするので興味をもって読もうかなと言ったら、最初に読むのはこれがいいと出してくれた。
カバーの内側にDJしている清野さんの写真があってとてもかっこいい。2001年発行の本だから15年以上若いときだ。もっと前に知っておけばよかった、ってどういう意味じゃ(笑)。

さっき読み終わったのだが久しぶりに清々しい小説を読んだ気分である。博之という主人公がいろんな場所に旅をして人の生死にも関わる物語だ。
最初の作品「プルターニュ14-1」はパリのプルターニュ通の19世紀に建った建物に住む人たちの話。パンションには失業者と外国人とアルツハイマーの老教授が詰め込まれ、そこに博之も住んでいる。1Fはパリで一番安くて狭いカフェがある。
とても貧しくて汚い場所の物語だけど、とても清々しい作品だ。博之に欲がないからかな。

二番目は東京に戻って働いている博之のところに、遠い親戚で幼馴染の幸太郎が仕事と住むところをなくして転げ込んでくる。ワンルームマンションのベッドの横にふとんを敷いて同居する二人。幸太郎の言葉「おれと博之は十五の時にパンクを聴いた」。それで全部通じる。

5編の小説が入っていて、その4つ目が「パラダイス・ホテル」。
メルボルンで借りたレンタカーが砂漠で動かなくなり、車を降りてバックパックを背負い歩き出す。足元にはカンガルーの骨が散らばっている。そして見つけたのがパラダイス・ホテル。
わたしのアタマには映画『バグダッド・カフェ』(1987)が思い浮かんだ。実はタイトルが出てこなくて検索もならず苦労(?)したんだけど。

最後の作品が「プルターニュ14-2」。パリ、真夏の炎天下で沸騰するデモ隊と催涙弾を構えた機動隊に囲まれる。
(河出書房新社 2000円+税)
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