mixiユーザー(id:9160185)

2020年06月02日00:38

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不意打ちのようにやって来る


暗い湖に朦朧と沈む膨張した死体の夢
網膜のなかに書き殴られた最期の詩
叫びはふやけた肉体に阻まれ
二度と出られぬまま溶解して流れ出る
いつだって午前二時
破裂と飛散を望むものたちが
内壁で騒動を起こすので
ある程度を彼らに任せるより他ない
生身のなかで死を学ぶ羽目になるのは御免だから
唇を開かずに話す
きちんと聞かせる為ではない言葉のような羽虫
生体として意味を感じさせない周辺を飛び回る
その羽音はこちらに届くことはない
必要のないものは認識されないようになっている
さあ、水を穿り、躯を引き摺り出すと良い
それを捌かなければおそらく必要なものは手に入らない
ナマズのような唇の間に腕を突っ込んで
掴みあげられるほど簡単なものではない
生かせてもらえないのだ
生かせてもらえやしないのだ
すべてを切り離してあらん限りの成果をそこにばら撒くことが出来なければ
いくら時計を見つめても眠ることなど出来るはずもない
それは欲望のように、激しい雨の日の雨垂れのように
容赦なく存在を蝕みにくるから
やつらの息が枯れるまで吐き出してやらなければならない
主導権がどちらかなんて
気にしていたらなにも始まらないままに終わりを迎えるだろう
いつだって理由はきちがいじみた衝動のなかで
切り刻むためだけの牙を光らせているものさ
暴力や暴動―他人のために行使すると
大多数の人間が認識しているそんな衝動を
おのれの内側に閉じ込めるのがここでのやり方
その場合、吐き出すべきものはふたつある
ひとつは言葉で、ひとつは血だ
そしてその違いは意外と誰にも分からないようなものだ
肉体を激しく切り刻んだことがあるか?
そのとき床に流れ落ちた血液と
衝動のままに並べられた言葉を時々見極めることが出来ない
どちらもどちらである、なんて
割り切ることが出来たらいっそすっきりするだろうけど
そう片付けることはなぜか許されてはいない
たとえ舵をとってもその方向には流れて行かない
いくつかのタブーがある、それは
ひとつひとつ丁寧に紐解いていけば
「もっとも容易く見つけられる答え」がそうだと気づくことが出来る
道など引かれていない場所だからひとはそいつを探そうと思うのだ
そんな本能はいったいいつのまに蔑ろにされてしまった?
言葉は止まることが出来ない、そんなもの必要ないのに
衝動は萎むことがない、そんなもの必要ないのに
「必要ないのに」と口にする連中がこぞって
負け犬みたいな吠えかたをするのはどういうわけだろうか?
衝動は最も敏感なコンパスの針だ
あるべき方角を瞬時に指してくれる
本当だぜ、俺は口だけの青二才じゃない
そんな人生を何十年も生きて来たんだ
衝動は剥き出しにして差し出して初めて効果を発揮するものさ
生活のために嘘をつける連中には理解出来ないだろう
ほら、懸命に、手繰り寄せる湖のほとりで
死体はますます冷たいにおいを放つ
完全に口を閉じたものがもっとも雄弁に話すことが出来る
ノイズと静寂が脳味噌に描く模様は意外と同じものだ
死体のように―死体のなかにあるものを語ることは出来るだろうか?
いつだって午前二時、死体の衝動を知りたくて内臓を掻き回している
きちがい沙汰だって、そうさ
そんなふうに振舞えることが嬉しくてしょうがないんだ
そう―なによりも


それが理性によって行われてるなんてよく出来た話じゃないか



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