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2020年12月04日06:58

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「ウイルス・ハンター〜アメリカCDCの挑戦と死闘〜」エド・レジス著、渡辺政隆訳、早川文庫

アメリカCDCといえば感染症対策の超一流組織。
ザイール共和国で発生したエボラ(当時はエボラ出血熱)との闘いの記録・・・と思ったらだいぶ違いました。
ほとんどはCDCの歴史などについての「脱線」話。もちろん無駄話が書いてあるわけではなく、感染症対策についての現実、歴史その他有益な知識が詰まっている。
ただ、ザイールのキクウィトという町での話を読んでいたらいつの間にか脱線しているので読みやすい本とは言えない。
エボラは大変恐ろしい病気であり、発症したら80%以上が死ぬ。当時は治療法もなし。隔離して死ぬか生き残るまで待つ(感染拡大を防止)しかできない。病院も清掃すらされず、患者に食事も治療も行えないほどのひどい状態。いったいどうやって終息したのか見当もつかない・・・
町の人の多くが感染し、亡くなったのではないか、私もそう思い込んでいた。
が、現実はだいぶ違うものだった。キクウィトの人口は50万人、死者は300人ほど。医療体制は貧弱で、手を洗う清潔な水すら不自由する土地だ。それなのに、この数字はおかしくないか?
でも、それが現実だった。
CDCが突き止めた「爆心地」はポント・ムウェンベの森の炭焼き小屋と突き止めたのだが、その森にはとてもたくさんの人が食料を手に入れるために入っているにもかかわらずエボラにかかった兆候はなし。CDC職員も毎日森に入っていたが防護服などは身に着けていなかったという。なんじゃそりゃ?
町にはマスコミも大挙して押しかけていた、と。

もちろん、CDCの医者が患者や遺体に接するとき、病室の清掃・消毒を行うときは2重手袋、マスク、ポリエチレンのガウン、長靴などを着用し、塩素系消毒薬を使いながら行動していたが、それ以上ではなかったらしい。
直接、ウイルスに接触しなければ感染はおこらない。それは当たり前のことなのだが、エボラという「恐ろしい病気」だから感染力も強烈で、近づいただけで感染するようなイメージを持っていた、ということなんだろう。

もうひとつ、とても大切なことがこの本には書かれていた。
エボラが自然に消滅し、終息した、ということだ。治療薬もワクチンもないままに。さらに、あらゆる動物・植物・土壌などを調べまくってもエボラウイルスの起源は発見されなかった。
ウイルスはどこからともなくやってきて、感染症を引き起こし、どこへともなく去っていったということらしい。突然変異で毒性をもったウイルスが発生するが、相手を殺してしまうウイルスは生き残れず絶滅する「らしい」のだ。

いろんな意味で想像を絶する世界がそこにあった。

今回のCOVID-19(SARS-CoV-2)も、その可能性がないとは言えない。
本当に考えさせられる一冊だった。
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