新しい方式での検査が出てくるまでは、このRT-PCR法というのが「一番正確に検査できる」。
以下は技術屋のおっさん(BSL-2の研究室には出入りしてたりはする)が調べてわかったこと、だ。バイオ関係は素人なので、プロが見たら笑われるかもしれないが、訂正・ご指摘をいただけるなら、大変ありがたい。
検体の取り扱いができるのはBSL-2+以上の研究室・機関に限られる。つまり私が出入りしているような研究室では扱えない。BSL-3は日本国内に13カ所、BSL-4は1カ所だけある。BSL-2+がどれだけあるかは知らないが、それほど多くないだろう。
RT-PCRとは「逆転写ポリメラーゼ連鎖反応」のこと。ほかにもリアルタイムPCRという手法もあるのでまぎらわしいぞ。
参考文献>
https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/2019-nCoV20200225.pdf
では検査手順を追っていこう。
・あらかじめ用意しておいた液と検体を計って混合し、10分置く
・エタノールを加えてチューブの底に落とすためにちょっと振る(専用の機械がある)
・専用のチューブに入れて1分間遠心分離(2回)
・そのあと何回もの遠心分離をかけて、検体からウイルスRNAを集める
・RNAのままではポリメラーゼ連鎖反応はできないのでDNAに逆転写する
8種類の溶液・薬品を正確に測って混ぜる。量は1マイクロリットル(1滴の50分の1ぐらい)などを正確に計る必要があるが、素人にはできないぞ・・・
サーマルサイクラーという機械に入れて30分(温度を3段階に上げる)
・1段階目のPCRを行う。そのために5種類の液をまぜて、サーマルサイクラーに入れる。今度は温度を3段階に変えながら40回繰り返す。余熱などもあるので2時間近くかかる。このとき、あとで確認するために検体を入れないものも作っておく
・2段階目のPCRを行う。また2時間ぐらいかかる
・できたDNAをアガロースゲルというものに入れて電気泳動(電気的なクロマトグラフのような方法)させる。これも条件によるけど数十分かかる
・アガロースゲルの中にできた帯を調べて、判定する。このとき、1つのサンプルだけでなく、検体が入ってないもの、どこに帯ができるかわかっているマーカーも同時に電気泳動して見比べる
とまあ、こんな手順なのだが、使用する器具の多くは消耗品だし、薬品はけっこう特殊といっていいので、製造が追いつかなければ検査に支障をきたす。
当然、複数の検体を平行に検査していっているだろうが、時間はやたらとかかる。北海道の例だと1日数検体しかできなかった、というのもうなずける。
そこまでやって「正確な結果が出るか?」というと、実はそれほど正確とは言い切れない。
検体は喉の奥からとってくるのだが、ウイルスがそこにいない(でも体内の他の場所にいる)可能性は十分にある。
RT-PCRは病原性でない多くのウイルスのRNAでもおかまいなしに増幅しちゃうので、どこにでもいる「他のRNA」の山からCOVID-19の病原体ウイルスを見つけなければならない。
たまたま他のウイルス(のRNA)がそこに帯(バンド)を作るかもしれない。
などなどの理由と「他の方法とのクロスチェック」ができないため、どの程度の検査精度があるか正確なところは、まだわからない。
そんな検査を毎日必死にやっている国立感染症研究所をはじめとする研究機関などの皆様には頭が下がる。それでも現在日本でできる検査は1日3000件ぐらいが限界だ。
他のウイルス性疾患でも同様の検査は必要だし、重症で検査を待っている患者さんもいる、ということを忘れてはいけない。
コロナウイルスそのものは「どこにでもいる普通のウイルス」のひとつで、普通の風邪(発熱を伴わない)の原因の約4分の1がコロナウイルスによるものだともいわれている。
インフルエンザウイルスと、コロナウイルスの電子顕微鏡写真はほとんど見わけがつかないぐらい似ている。インフルエンザウイルスなら、表面に生えている「毛」(抗原)が特徴的なので、そこに反応する抗体があればそれを指標にして検査ができる。
コロナウイルスのやっかいなところは、ほとんどのやつが病原性ではなく、どこにでもいること、病原性のやつも「毛」に違いがないこと、だ。
だから人間の免疫系も「こいつは無害」と思いこんで放置してしまい、症状が進んでしまう、ということかもしれない。
すばやく検査ができるようになれば、すばらしいことなのだが・・・実にやっかいな病原体だな、というのが「調べてみた」感想である。
島津製作所がコロナ試薬開発へ
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&from=diary&id=5996143
ログインしてコメントを確認・投稿する