mixiユーザー(id:91293)

2019年09月07日13:58

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「三体」劉慈欣著、早川書房

はっきりいう。
これを超える小説を書ける日本人はいない。それほど壮大なスケールの小説。

 話は文化大革命から始まるのだが、そこで私が受けたカルチャーショックはかなりのものだった。アインシュタインの相対性理論を「資産階級理論の黒旗」と言い、打倒しなければならない反動的な理論だと言い切ってしまう革命の先鋒が出てきたりする。
 この言い分が何に似ているか?と考えるまでもない。SNSの批判的なコメントや「炎上」にそっくりなのだ。科学や知識、知恵、努力、戦略などなどを知ろうともせずにただ大きな声でわめきたて、自分が正しいと主張し、あいつがいなければそれで幸せになれる、と思い込んでいる恥ずかしい人々と同じだ(そういう国が隣にあったりもする)。
そんなことを考えてしまう私が変なのかもしれないが。

 さて話を「三体」に戻そう。
 天体物理の「三体問題」がこの小説のベースではある。が、中国の歴史、科学史、量子論までを使って話はどんどん壮大になっていく。
 途中、出てくる「コンピュータ」は三千万人の兵隊を論理素子に使った人力(といっていいだろう)コンピュータだが、それがごくちっぽけなものに見えるほど、全体の話は壮大だ。
 当初は鼻持ちならない奴、としか思えない登場人物が最後に大きな「鍵」となったり、あちこちにばら撒かれている伏線が回収されていなかったり(またそれが現実味をかもし出す薬味になっている)、西遊記(花果山の石猿天上界で大暴れ、太宗皇帝の地獄めぐりを含む)を超える超壮大さ。

 そして、現代の中国人の根底となっている「もの」に触れることもできる小説でもある。

 さらにこれが三部作の1作目に過ぎないという。
 まだハードカバーしか出ておらず、1900円(税別)と安い本ではないが、私が言えることはひとつ。

 読 め 。 た ぶ ん 、 損 は し な い 。

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