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2019年09月20日23:55

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そもそも人生とは物語でもなく予定調和でもない 『ゴールデン・リバー』

「人生は物語だ」とのたまう表現があるが、*1
人生は「物語のように予定調和」でも「すべてが劇的」でもない。

伝記や史実は脚色ゆえ物語的である。*2
人生の喜びや嵐はだれでもあるだろうが、劇的な一幕は一瞬。
以外は「物語にもならない人生」だ。

殺し屋のシスターズ兄弟が、
金発見の化学式を持つ探鉱者を探し出すロードムービー。
滅茶苦茶な弟チャーリー(ホアキン・フェニックス)のケツを、
兄のイーライ(ジョン・C・ライリー)が拭く。

2人の人生の一幕は、弟の性格もあって支離滅裂。
物語的整合性を欠く。
西部劇的要素を期待してしまうと――追っ手の撃退に裸足で乾いた土の上へ。
返り討つイーライの無骨さや泥臭さは十分だが――失敗する。

本作の要は兄弟の人生。
科学者で探鉱者のハーマン(リズ・アーメッド)の夢想。
裏切り者のジョン(ジェイク・ギレンホール)がハーマンへ抱く信奉だ。

金発見の化学式は本物。
兄弟は自身を差し向けた“提督”を裏切りハーマンへ協力。
大儲けとともに、ハーマンと彼を信奉するジョンたちの夢想は成功しそうになる。

だが、それらを映画は否定する。
チャーリーの軽率が物語を破綻させてしまい、
探鉱者と信奉者はつまらなく世を去る。*3

兄弟はお尋ね者に。
“提督”と死を賭し戦う覚悟をきめるのだが、
これまた当然の理由で終了し物語にはならない。*4

旅は終り嵐は去る。2人は「物語にもならない人生」へ帰る。
なら帰る先が母親のもとは納得だ。*5


※1 こういうヒトらは自信過剰か意識過剰、あるいは自身の人生に、いま現在“満足”できていないのだろう。

※2 自分の人生を“ハナ”から物語だと意識している人間などはいない。その人生を記録や回想でまとめたり、振り返る、あるいは「他人」が「他人」の人生を見聞きし回想するとき、ある人物の人生が「物語」になるのだ。

※3 だれもが劇的に世の中を去るわけではない。他人から見れば「当たり前」もしくは「つまらない/くだらない」死に方も一杯ある。死のみ等しい。

※4 本当に「至極当然の理由」で戦いは終わる。

※5 普通なら母親はだれにでもいて、普通なら母親は子供らへ無私や強い愛情をそそぐ。多くの人が帰る先だ――。
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