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2020年01月25日10:28

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新国立劇場「ラ・ボエーム」(初日)

1月24日 新国立劇場
指揮:パオロ・カリニャーニ
管弦楽:東京交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団

出演
ミミ ニーノ・マチャイゼ
ロドルフォ マッテオ・リッピ
マルチェッロ マリオ・カッシ
ムゼッタ 辻井亜季穂
ショナール 森口賢二
コッリーネ 松位浩
ベノア 鹿野由之
アルチンドロ 晴雅彦

 今年の初オペラは、いつもの新国でいつものオペラを…。なんかキャッチフレーズみたいだな。傑作中の傑作なのは間違いないけど、よっぽどいい演奏じゃないとなかなか心が動かされなくなっているのは、年のせいかも。若い頃はカラヤン盤をちょっと聴いただけで泣けたのに…。年はとりたくないものだ。

 今回公演の目玉は、マチャイゼの初登場。世界中の一流オペラ・ハウスで歌っている売れっ子。パロマでのヌッチとのリゴレットの映像見て、なかなかいい歌手だと思っていた。ただ、声質は鋭いレッジェーロで、ミミにはどうかとちょっと心配だった。
 ジルダから10年経っていたということもあり、声質が少し重くなって、ミミに合ってきたようだ。低いところから高いところまでムラなく響くし、ソット・ヴォーチェ等の技術もある。しかも技術を表に出すわけでなく、丁寧な安定した歌唱。
 1幕のアリアの隅々まで神経を張りめぐらせた精緻な表現や、3幕での重唱とアリアの感情表現も見事。4幕をもう少し攻めてもよかったかもしれないが、まあ初日なのでここは安全策をとったというところだろう。間違いなく一流。
 去年ザルツブルグでルイザ・ミラー歌っているようだが、こうなればヴェルディがいいだろう。フリットリの後継者ということかもしれない。また日本で歌って欲しいけど、ちょっと無理かもしれないな。とりあえず、また来てねブラバはしておいた。

 驚いたのはムゼッタの辻井。今まで名前を聞いたこともなかったのでビックリ。2幕なんか凄い気合いで、マチャイゼを食ってたかも。声質は芯のあるレッジェーロで美しいし、技術もある。しかも、若くて(33歳だそう)美人でスタイルがよくて、舞台でのオーラもあって演技も巧く、完全に日本人離れしてた。ペラゴロ・ジジイの心を一瞬でわしづかみ。オペラ・グラスでずっと追っかけてた。
 なにより心情表現が素晴らしく、ムゼッタが派手な外面の裏で、実は哀しい女性であることを見事に表現。3幕の最初の舞台裏(居酒屋)で、ワルツの一節を口ずさむところがあるが、ここにムゼッタの哀しみがあることに、初めて気づいた。また4幕でミミが死んだことがオケで表現された後、ムゼッタの短い祈りのフレーズがあるが、この祈りでミミが天国に召されたことを知ることができる。ここも初めてその意味がよくわかった。
 愛知県立芸術大学を出てドイツに留学し、そのままドイツの中小劇場で歌っているよう。たぶんムゼッタも何度も経験していて、キャリアが違うんだろう。こういうのが、舞台ではっきりとわかるもの。二期会や藤原公演で歌うことはないと思うので、今後はぜひ新国で積極的に起用してもらいたい。とりあえずモーツァルトは絶対にいいはず。日本の歌手も若いときから海外にどんどん出た方がいい。温室育ちではもうだめな時代だろう。
 カテコで天井桟敷から大ブラバ2発やったのは、コバプーです(とりあえず最初からの推しだということを売り込んでおかないと)。

 テノールはイタリア人で、声質はレッジェーロとリリコの間ぐらいで役には合ってる。1幕のアリアを丁寧に歌おうとしていたのには好感が持てたが、各所でスキマ風が吹いていてマチャイゼと比べると未熟さが目立った。ただ、3幕以降は吹っ切れたようでよかった。
 カッシもイタリアのバリトンのよう。声は立派なんで、将来ヴェルディ・バリトンに成長しそう。またヴェルディで聴いてみたい。

 指揮とオケは手堅くまとめていた。ただ、バッティのプッチーニには泣けるのに、カリニャーニだと泣けないんだよな。頭で作ってるのがわかっちゃうからなのかも。でも別に文句言うほどのことではない。

 初日だったが、新国名物初日ゲネプロはだいぶ解消されてきたよう。逆に名物がなくなるとなんか少し寂しいかも。聴く方は勝手なものだ。
 とにかく辻井の大抜擢は監督のお手柄。こういうのは本当に評価できる。
 

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