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2019年06月25日12:18

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ボローニャ歌劇場「セヴィリアの理髪師」(東京公演二日目)

6月24日 オーチャードホール

指揮:フェデリコ・サンティ
演出:フェデリコ・グラッツィーニ
管弦楽:ボローニャ歌劇場管弦楽団
合唱:ボローニャ歌劇場合唱団

アルマヴィーヴァ伯爵 アントニーノ・シラグーザ
フィガロ ロベルト・デ・カンディア
ロジーナ セレーナ・マルフィ
ドン・バルトロ マルコ・フィリッポ・ロマーノ
ドン・バジリオ アンドレア・コンツェッティ
ベルタ ラウラ・ケリーチ

 ボローニャのセヴィリアを聴いたのは17年前の来日公演以来。その時はヌッチ・フローレス・カサロヴァのキャストで確かに凄かった。フローレスの大アリアの後の文化会館の爆発は、それ以後今まで経験ないぐらい。昨日はそれに比べると小粒だったかもしれないが、それでも十分楽しめた。

 ボローニャにとってロッシーニは、まさに自家薬籠中のもの。オケは完全にロッシーニが血肉となっている。ちょっとした木管のフレーズや、弦の刻みやカンタービレにいちいちゾクゾクさせられる。
 さらに指揮者がまたよかった。神様ゼッダの薫陶を受けているということで、推進力のあるリズムといい、1幕フィナーレの曲想の描き分けやオケと歌手・合唱の絡ませ方といい、なんの文句もない。さらにこの指揮者、上品でフレージングがいい。若いときのアバドによく似ている。最近流行の尖ったロッシーニもいいけど、こういうロッシーニも悪くない。聴いてて本当に気持ちが良かった。

 シラグーザの伯爵を聴いたのは、2007年のスポレート来日と2011年の藤原だったと記憶。藤原の時はそのまま日本に居残って、ボローニャとフローレスの代役アルトゥーロを歌った。ほんと騎士道精神のかたまりで、日本を大事にしてくれる。ランカトーレと並んで生涯贔屓の歌手。
 昨日も、目一杯歌って演じてくれた。もう、舞台にいてくれるだけでありがたい。ただ、大阪や福岡合わせて5回、移動しながらの大アリア付伯爵というのは、さすがに厳しいよう。大アリア直前までは完璧だったが、アリア中盤で力尽きたようで、肝心の後半が不安定になってしまった。藤原の時は神様の指揮ということで、キチンとした歌だったが、昨日は少し怪しくなっていた。ネットの感想みると、神奈川がベスト・フォームだったよう。

 しかし、ここで終わらないのがシラグーザ。場内からbisの声、おいおいそれは可哀想だと思ったが、「ちょっと待って」と日本語で言った後、まさかのbis。さすがに本息では歌えず、カンディアがうまく場内に手拍子を要求して、手拍子といっしょに歌いきった。まさか、伯爵の大アリアで手拍子するなんて、生粋ロッシーニアンだったら怒り心頭だろうが、こんな機会は二度とないと手拍子に参戦。いや〜楽しかった。
 シラグーザのサービス精神にはホント、頭が下がります。やはり生涯贔屓にするしかないわ。見た目にも疲れ切っていたのがわかったが、明日の福岡大丈夫だろうか。応援に行きたいが、さすがにちょっと…。

 カンディアは、イタリア正統フィガロという感じ。新国でのファルスタッフもよかったが、こっちが本領だろう。悪目立ちもせず、バランス良くはまった見事な狂言回し役。こういうのが、実は難しい。
 バルトロ役のロマーノも正統バルトロ。ボローニャの座付き歌手なんだろうか、ブッフォの演技が見事なもの。悪役と言えば悪役なんだが、医者ということでどことなく品を失わないあたりのバランスがいい。
 マルフィはメトなんかで歌っているようで、今回の上演スタイルや歌手の中では、少しスケール感が違ったかもしれない。1幕はうまくはまらなかった感じだったが、2幕からはバランスがよくなった。声そのものは深みのあるメゾで、かなりの実力者。タイプとしてはヴェルディの方が適正ありそうで、エボリなんかはいいだろう。

 リゴレットも含めて、今回はイタリア人歌手を中心に、日常的なボローニャの最上の姿を示してくれた。歌手がみんなコミュニケートしながら、一生懸命歌っていたのが印象的で、まとまりのあるいい来日公演だった。観客は盛り上がってはいたが、やはり少なかったのが残念。これは会場のせいでもあるだろう。私も含めてほとんど高齢者なので、あの渋谷の雑踏と、なぜか2階までしかないエレベーターをのり越えて行くのは確かに難儀なこと。

 キャンセルもなく、主催者への信頼は回復したと言える。装置はともかく、比較的安価だったのもよかった。なかなか海外には行けない身として、海外オペラ座の来日公演はできるだけ応援したい。
 しかし、やっぱりイタリアのオペラハウスはいい。今度生まれ変われるならイタリア人がいいな。
 
  

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