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2022年06月19日14:16

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トランティニャンが死んだ

ジャン・ルイ・トランティニャン。
映画「男と女」で有名、と自分は思っている。

だーばーだー だばだばだだばだばだ
だーばーだー だばだばだだばだばだ

鼻の下がやや長い、フランス風のハンサムだ。
相手役はアヌーク・エーメ。ものすごくえらが張っている、意思の強そうな美人。
この映画の中では「タイムキーパー」という仕事をしてて、
映画撮影現場で女性が堂々と「お手伝い」じゃない仕事をしてる!
と驚いた方々もいるのではないだろうか。
夫はスタントマンだったが、撮影中の爆発事故で死んだ。
回想シーンでアヌーク・エーメが着ているラムの裏皮のコート、
えりとそでが表に返してあって羊の毛が見えているタイプ、かなり流行ったよね。

フランスの海岸にある全寮制の寄宿学校に、週末に親が会いに来る。
ふたりは同じ学年の子を持つ親同士。
たまたまアヌーク・エーメ(女)が汽車に乗り遅れて、
ジャンルイトランティニャン(男)が「パリまで車で送ります」と言う。
男は職業レーサー、トランティニャンは実際にF1レーサーだったんだってね。
お父さんもそうだったとか。
で、なんとなーく関係を持つわけだが、大人だし別に、みたいな
クールな二人なんです。いかにもフランス映画。

物語の後半、男はモナコ耐久24時間レースで優勝するんですが、
その優勝パーティーをテレビで見た女が、パーティー会場に電報を打つ。

「おめでとう、愛しています」

男はびっくり、「愛してる」って書いてあるぞ!
パーティーなんか出ている暇はない、言い訳して車に飛び乗り、パリへ向かう。
モナコからですからね、かなりの距離ですが。
夜通し運転しながら、男が考えることが以下の通り。
「愛してるんだって!彼女は僕を愛してる!!」
「パリに着いたらすぐに家に行って、僕もだよ!って言おう」
「いやいや、それじゃあまりにもあからさますぎる、彼女も照れがあるかも」
「夜明けまで待って、ちょっと通りがかりました、カフェに行きませんか?」
「いやいや、それもわざとらしすぎる」
と、考えながら夜明けの時間にパリに着く。
いろいろ作戦したはずなのに、まっすぐ女のアパートに向かう。
女は留守!!
管理人室の扉をたたいて「どこへ行きました?」「教えられないよ!」
少し時間をおいて「警察だ」と言うと「娘さんの学校に行きました」。
そこからまた、学校(ドーヴィル、これもかなりの距離)に向かう。
一睡もしてないしひげもそってない。シャワーを浴びる暇もない。
学校で「どこへ行きました」「海岸で遊ぶって言ってましたよ」
車をそのまま海岸通りに回す。子供ふたりと女が砂浜で遊んでいる。
男は車から降りて「おーい!!!」三人が振り向く。
お互い駆け寄って、硬く抱き合う。ここでジ・エンド。

パリへ向かう運転途中にあれこれバカなことを考える男が、すごくかわいい。
なんか聞いてて恥ずかしくなるような純情さ。
で、かっこよく見えるような計画したのに女の留守で一瞬にすべて潰され、
会いたい気持ちだけになってドーヴィルへ向かう。

恋はこうでないとね。
実際にはいっしょにいるといろいろこまごま、不都合なこととか、
ケンカのタネとかあるんだけど、とにかく会いたいんだよね。

今調べたら、2019年に「53年後の続編」ができていた。
見ようっと。もちろん前の作品といっしょに。

そうそう、ふたりが初めて関係を持つときね。
ホテル(今もドーヴィルにある素敵な建物)で食事をするんだけど、
遅い時間だから自分たち二人しか客がいない。
注文してから、女が男にささやく。
「なんだか、もっと注文してあげないと悪いみたい」
男が言う。
「そうだね、注文しよう」
指を鳴らしてギャルソン(フランスだからボーイじゃない)を呼ぶ。
「追加のご注文ですか?」「ああそうだ。部屋をひとつ頼む。」

おしゃれだよなぁ。
ジュリーじゃないけど「男がぴかぴかのキザでいられた時代」だよ。
今は無理。
時代は変わった。ジャン・ルイ・トランティニャンは91歳で死んだ。
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