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2022年05月15日11:10

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戦争は女の顔をしていない その11

「私たちは銃を撃ってたんじゃない」の章

二等兵(料理係)
「コルホーズで働いていたとき、村議会の議長から呼び出された。
令状が来てここから前線に二人出さなければならない、自分は義足だから行けない。
私たちはぼろを着ていたので、ちゃんとした服がもらえると聞いて行くことにした。」
「一日中スープを煮る。それから夜には兵隊たちの洗濯物。
見張りに立っていて「見張り」と呼ばれても答えられない。もう声を出す力がない。」

衛生係
「負傷者の世話をしていた。水を飲ませたり、食事を与えたり、おまるを使わせたり。
私と組んでいた年上の女の子は「尿瓶を頼まれたら呼んで」と言ってくれた。
夜一人残ったとき「看護婦さん、尿瓶を」と頼まれた。
私が差し出しても受け取ってくれない。両手がないの。
頭の中でさっとひらめいて何をどうしなければならないか想像がついた。
数分、呆然としていた。見たことがないし、研修では習わなかったし。」

料理係
「私たちは銃を撃ってたんじゃないの、お粥を炊いていたの。
お粥とか兵隊のスープを作っていた。重たい釜や容器をひきずって。
指揮官が言ってた。
こんなに重いものを持ったら戦争が終わっても子供が産めなくなるぞ、って」
「兵隊たちは最前線から戻ってくると休憩を与えられるの。
みな泥だらけで疲れ果てていて、手も足も凍傷になっている。
寒さをことに嫌がったのはウズベクやタジクの兵士たち。
太陽一杯の国からきていきなりマイナス30〜40度。
どうしても温まらなくて、食事になってもスープのさじを口までもっていけない。」

洗濯係
「洗濯してたわ。戦争の間中洗い桶と離れなかった。手で洗ったの。
分厚い綿入れの防寒着も、兵隊シャツも…洗濯物がどんどん運ばれてくる。
擦り切れて、シラミだらけで。雪上カモフラージュ用の白い服は裏まで血に染まって。
水で洗っても落ちないの、黒ずむほど血に染まっていて。
詰襟の軍服も袖が取れたのや、胸が穴だらけのや片足だけのズボン。」

軍曹(通信兵)
「戦争中には数限りない奇跡が起きた。
わたしたちの通信兵が、アーニャが、心臓に弾丸が当たって息を引き取るところ。
アーニャはにっこり微笑んだ。「ねえ、あたし本当に死んじゃうのかしら」。
郵便配達が駆け込んできた。「死んじゃだめ、あんたの家から手紙が来てるわ」。
アーニャは目を閉じずに待っている。郵便配達は手紙の封を切る。
お母さんからの手紙「あたしの大事な、かわいい娘や…」。
手紙は終わりまで読み上げられて、アーニャは目を閉じた。」

二等兵(理容師
「あたしの専門は男性の整髪。女の子がくるとどうカットしたらいいかわからない。
指揮官が入ってきて「男みたいに刈ってやれ」「でも女性ですよ」
「いや、彼女は兵隊だ、女に戻るのは戦争が終わってからだ」。
でもやっぱり…やっぱり…。
ちょっと髪が伸びてくれば夜、女の子の髪をセットしてあげました。
カーラーの代わりに松かさを使って、せめて前髪だけでも巻いてあげました。」

洗濯係
「本はあまり読まなかった…だから上手に話すことなんかできないの。
あたしたちは兵隊さんの身なりを整える、洗濯、アイロンがけをしてやった。
それがあたしたちの英雄行為。馬に乗っていったの。汽車で行ったところは少なかった。
馬も疲れ果てていた。歩いてベルリンまで行ったようなものよ。
思い出してみると、必要なことは何でもやったわ。
負傷者を運んだり、ドニエプル川を通って砲弾を運んだり。
何キロも手でかかえていくのよ、車で運べなかったから。」

軍曹(書記
「私は書記として登録していた。本部でこう説得された。
あなたは戦前カメラマンをしていた、ここでもカメラマンをやってください。
私がよく覚えているのは、死の写真を撮りたくなかったこと。
私が撮ったのは、兵士たちが休憩しているところ、タバコを吸ったり笑いあったり。
それが、今はジャーナリストがやってきてこう聞く。
あなたは殺された人達の写真を撮ってたんですね、戦場を?
死を撮った写真はあまりない。誰かが亡くなるとみんながこう頼む。
彼が生きているときの写真はある?って。」

少尉(郵便局員
「手紙が最前線に届くと封筒にキスしたり、泣いたりしているのをこの目で見た。
多くの人は身内が占領された区域にいたりそこで死んだりしていた。
そういう人たちは手紙を受け取るあてがない。
それで、私たちが「見知らぬ女の子」になって代わりに手紙を書いたの。
「大事な兵隊さん、この手紙はあなたの知らない女の子からです。
敵をやっつけていますか?勝利して戻ってきてくれるのはいつでしょう?」
毎晩手紙を書いて、戦争中で数百通もの手紙を書いた。」
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