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2022年05月08日17:02

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DVD「護られなかった者たちへ」

映画館で2回見たけど、DVDのいいところはセリフの字幕が見れること。
一番気になってたのは、ラストシーン。
奥さんが打ち上げられた海辺で、主人公の腕の時計のアラームが鳴る。
奥さんは息子(小学校低学年)の腕時計を握って発見されたが、息子は見つかっていない。
主人公がつけている時計は、その息子の時計だ。
アラームが鳴ったあと、主人公が何か言うのが聞こえなかったんだが、
字幕では「はいよ」と書いてあった。
このシーンの直前、利根くん(殺人事件の犯人と思われてた人ね)が
主人公に言う。
「黄色いジャケット着た男の子が沈んでいくのを助けられなかった」。
主人公の息子も、黄色いジャケットを着ていたはずだった。
主人公が利根くんに言う。「助けようとしてくれてありがとう」。
そこでアラームが鳴る。

いろんな解釈があるだろうけど、息子から「お礼言ってくれたんだね」って
メッセージが届いた、と考えるのがすなおかな。
わざとらしいと思う?くさいセリフと思う?
東日本大震災で津波を経験しちゃった人じゃなければ、わからないだろうね。

今回のDVD鑑賞では、映画館で見逃してた細かい話がいくつか見つかった。
「見逃した」と言うか、見てたけど見えてなかったのかな。

たとえば、利根くんカンちゃんを世話したおばあさんが言う。
「膝が痛いのに必死で坂を上って、今思えば死んでもよかったのに」。
自分が死ねばよかった、ではなく、他に生きていたかった人や、
生きててほしかった人、生きていなくてはダメな人がたくさんいたのに、
なぜ自分が?という意味。
震災後にクリニック再開したとき、たくさんの患者さんから同じ言葉を聞いた。
一生懸命答えた。
「まだこの世でやるべきことがあるんです。それを探すため生き残ったんです」。
我ながら、よくこのセリフを思いついたもんだよ。
それ以外、言いようがないものね。

小学校の避難所のシーン、がれきがほったらかされている坂道のシーン、
今見ても「これが写真見て作ったもの」とはとても思えない。
…まああえて言えば、道路の真ん中だけ通れるようにがれきがよけてあるのは、
震災後かなりたってからだけどね。震災直後にしてはきれいすぎるよね。
ずいぶん長い間、橋のたもとに座礁した船をよけて橋を渡ってたっけ。

遺体安置所で奥さんが見つかって、呆然としながら体育館を出た主人公は、
そこに、奥さんと子供が自分を待っているように立っているのを見る。
もちろん生前の、きれいできちんとした奥さんと元気な男の子だ。
子供が自分のところに来ようと前に出ると、奥さんが止める。
子供の腕には時計がある、主人公はふと、自分の腕を見てしまう。
アラームが鳴り、顔を上げるともう、ふたりは見えない。

あの頃、そんなこといくらもあったと思う。
みんな、言わないだけ。
なんであのとき、じっと見つめ続けなかったんだろう。
目をそらさなければ、今もずっといっしょにいられたかもしれないのに。
…なんて思ってしまうんだよね。



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