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2022年05月07日08:24

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お産は24時間365日

予定なんかたたない、いつ始まるかわからない、ついでに終わる時間も不明。
それがお産。
だから、産科医ひとりの産科なんて絶対に成立しない。
いつたたき起こされても当たり前、ちょっと近場にドライブすらできない。

ちなみにワシは東北大学卒の産婦人科医だが、
2000年代になっても、「地方のちょっと大きめ病院の産婦人科」は
部長ひとりだけ、部下なし、が多かった。
「開業医さんはひとりでお産とってる」という理屈だったようだけど、
開業医さんはある意味、予約の数を制限できる。
それにお産とったらとっただけ収入になるので、お金ほしいから頑張る、とか
ちょっと体きついので予約少な目、もできる。
勤務医はいくらお産とっても給料は同じ、時間外など微々たる金額。
…毎日呼び出されていればそれなりの金額になるが、体がきつい。
命を削ってのお金、しかも断る権利なし。
労働者に当たり前の有給休暇なんかまったくとれません。
もちろん大学は月1回土日、とかアルバイト医師を派遣してくれるけど、
それだってひとり派遣です。しかもそこの部長より年下で経験もない。
部長は「家でのんびり酒を飲む」くらいしかできないよ。
だって自分の患者に何かあったらバイトのせいにはできないもん。

…というのが当たり前とずっと思わされてきた人が多かったけど、
ワシは反抗的な性格だからなのか(皮肉です)「そんなのおかしい」と思っていた。
お産はいつ帝王切開になるかわからないし、下からのお産でも
産科医2人必要なこともある。
なんでひとりが当たり前なの?何かあったらどうするの?

そして「何か」がやっぱり起きた。
一番有名なのは福島県の「産科医勤務中に手錠かけられちゃう事件」。
海岸沿いの少し大きめ病院の産科で、お産する前から
「この帝王切開は難しい」とわかっている患者がいて、
主治医(その病院でたったひとりの産科医)は県立医大での手術を勧めたが、
患者および患者家族はその病院での手術を強く希望。
結果的に子宮壁から胎盤を剥離するとき出血が止まらなくなり、
患者は死んだ。
で、なんと「業務上過失致死」で医者が逮捕されちゃったんだよ!!!!!

無理かもしれないここでは難しい、と言ってるもんをわがままいって、
結果患者が死んだら医者のせいっってどうよ?
この事件は産婦人科のみならずすべての科の全国の医師を巻き込んで、
大騒動になった。
結論は、産科医は無罪。当たり前だけど。

以後、東北地方で「大学からひとりだけ産婦人科医派遣」されてた病院は、
「ちょっと大きめ」病院は産婦人科を「なし」にして、
その近傍(隣の市とかのこともある)の「明らかに大き目病院」に
複数の産婦人科医を送る、いわゆる「産科集約」が進んだ。
自分の配下を守れなくて何が大学だよ、ってことですよ。
そして「近くの病院でお産できない」場所が増え、
町長だの市長だのは住民から「近くの病院に産婦人科を!」と要求され、
選挙公約に「産婦人科医確保」を上げたりしてますが、
なにせ、例の事件以来、産婦人科になる若者も減少しましてね。
出す人間がいないのだから出せないのです。

1日一個金の卵を産むガチョウに2個産めと無理をいい、
産まないので殺して腹を割いたら何もなく、もう金の卵は手に入らない。
…なんか似てますよね。

そういうわけで、東北地方ではもう(たぶん)ありえない話ですが、
その他の地方では「市立病院」という大き目病院でも産婦人科はひとり、が
まだあるってことですね。
でもそういうとこってたいてい、勤務医が休みをとるときは
派遣大学からアルバイト送るんだけど…でも、派遣じゃなく、
市長さんとかが勝手に探してきた「さすらいの産婦人科医」なら
休暇をとるとき留守を頼むのは大学、というルートもないし、
病院自体が探すしかないし、探せないときはこうなるんでしょうね。

ひとり産婦人科体制なら、いつこうなってもおかしくない。
なんで過去の経験から学べないのかしら〜

ああ怖い怖い。
お産は本当に怖いですね。(棒

追記;ウィキになってましたね。有名事件だもんな。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%9C%8C%E7%AB%8B%E5%A4%A7%E9%87%8E%E7%97%85%E9%99%A2%E7%94%A3%E7%A7%91%E5%8C%BB%E9%80%AE%E6%8D%95%E4%BA%8B%E4%BB%B6

■妊婦に適切な処置せず、出産後に新生児死亡 石川・市立輪島病院
(朝日新聞デジタル - 05月06日 20:05)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=6947423
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