mixiユーザー(id:8729247)

2019年12月09日08:32

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映画「ドクタースリープ」

残念ですがおもしろくありませんでした。

なんで?と思いました。原作の細部はかなり生かされているし、
キューブリック前作へのオマージュもあるし…。
パンフを読み直してて、あ、そうか、と思ったのは

監督さんがキューブリックとキングの両方におもねっている。

…からだと思いましたよ。

キューブリックが偉大な映画監督であることは言うまでもない。
今映画関係者で「キューブリック大嫌い、あいつだけは許せない」って公言できる人、
たぶんいないと思うわ。
いたとしたら「自分があれほどの映画が作れない」から悔しいんだろ。
シャイニングもすごい映画ですよ。

原作とかなり違うからキングは気に入らなかった。
でもさぁ、これ、実際口に出す作家さんもいるけど。
「自分が書き終えたら作品は読んだ人間のもの」なんだよね。
どんな意図をもって書かれても、読者の解釈は人それぞれ。
作家が全然考えてなかった方向で評判になるとかありえる。
作家にはそれをどうしようもできない。
それが作品ってものなんでしょ。

だからキューブリックが映画化するとき原作をどう料理しようが、
キングには関係ないと思うのね。
原作は原作でいい話なんだからさ。
オーバールックホテルが爆発しなくてもとうちゃんが凍死しても
ハローランさんが何もできないまま死んでしまっても、別にいいじゃん。
そういう映画ができたからって原作「シャイニング」が嫌われることはないと思う。
どうしても原作通りに映画作ってほしいなら映画化許可するべきじゃない。
自分がお金だすプロデューサーになって好きなように画像つくればいい。
…でももしキングがそうしてたら(莫大な予算かかっているからキングには無理だったけどね)
画面から雪と氷のにおいがするあの素晴らしい映画を我々は見ることができなかった。
貴重なキューブリック作品がひとつ、世に出ないことになってた。

ドクタースリープは長い物語で説明しなきゃならないとこがいっぱいあるけど、
この作品で出た設定はほぼ完ぺきに映像化されてた。
まずいのはキューブリックの映画となんとかつなげようとしたところと、
キングの意向に沿うような設定をいろいと作っちまったことだよ。

キューブリック映画ではおとうさんはホテルといっしょに爆発するのでなく、
凍り付いたホテルに取り込まれ、ロビーにある「開業時パーティー」の写真に映っている。
だから今回の映画ではオーバールックホテルを再現して、
コロラドラウンジで酒を作るのは「とびきりのバーテン」ロイドでなく
(自分はロイドですと名乗るが)ジャック・トランスおとうちゃんという設定。
これもまずい。ジャックニコルソンと横顔は少しだけ似ているけどまるで別人で、
声も違うし、「これ誰?」っていう違和感がものすごい。
しかもこの場面、前映画を見てないと絶対にわからない。

映画って前作品見るのが前提の続編は、あまりいいもんじゃないと思うよ。
特に数十年たって別監督が作る場合は。

俳優の話をすれば、前作で顔が一番怖いと評判だったウエンディかーちゃん。
平常時の顔が似ている女優を使ったけど、悲鳴上げるときの迫力が、ねぇ。
ハローラン役は顔がそっくりで声とか物腰とかもそっくりで安心して見れました。
亡くなったこと知ってたけど「CGで再現?」と思ったくらい。

で映画ですけどね。
最期にボイラーを加熱させてホテル爆破するダニエル・トランスもたまげた。
オーバールックを爆破するのがそんなに大事なのかキング?!
あのシーンで、原作ドクタースリープのいいとこ半分がたぶっとんだ印象。
原作の印象変えてまで前作のキューブリックの「間違いを正す」のにこだわったのかと、
作者としてでなく映画鑑賞者としてのキングを嫌いになる。
優れた文章書きが映画の評価もまっとうでなくてはならない、なんて決まりはないけどね。
それにしても。

ワシはキングの作品も大好きだが、映画のキューブリックと文章のキングと並べたら
明らかにキューブリックは大物で巨匠でレベルが違う。
キングが自分の方がエライと思っているならむしろ口出ししないほうがいい。
「まああの人はあの人でやればいいんじゃないですか。自分には関心ないです」ってのが
精いっぱいの知的な反抗ではないかと思う。
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