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2019年10月09日08:57

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映画「ジョーカー」(再掲

哀しい映画だな、と思った。

アーサーはゴッサムシティの下町で母親と暮らす。
母親は心臓に持病があり心の病もあって、アーサーの世話がないと生きていけない。
アーサー自身も「生まれつきの病気」で怒りの感情がわくと笑い発作が起きる。
精神的にも不安定なところがあり、福祉サービスでカウンセリングと投薬を受けている。
仕事は、コメディアンを目指しているが今のところはピエロ。
ピエロをあっせんする組合に所属していて、店の宣伝とか病院の慰問に派遣される。

ゴッサムシティは大混乱中。
市の予算ひっ迫で公務員の給与カットがひどく、ごみ収集担当のストライキにより
町中は収集されないごみであふれている。
収入がないので人の心も荒れる。

アーサーは閉店セールの楽器店の前で宣伝をしているとき、
通りすがりの少年たちに宣伝看板を奪われ、囲まれてさんざん乱暴される。
「自分の身は自分で守れ」とピエロ仲間から銃を(金は後でいい)もらうが、
小児科病棟の慰問のときポケットから落ちた銃を見られ、
「楽器店の宣伝看板をなくした」こととあわせてピエロ組合を首になる。
通っていた福祉サービスのカウンセリングも予算不足で閉鎖、
無料だった精神安定剤7種類ももらえなくなる。

がっかりしてピエロ衣装のまま電車で帰宅する途中、
電車内でサラリーマン3人にからまれる。
持ってた銃をつきつけて、撃ってしまう。
一人撃つと、何かから解放されたように3人とも射殺する。
この3人がたまたま、市長候補者の大富豪、トーマス・ウェインの会社社員だった。
彼が、すべての社員は家族同様で家族を殺した犯人は許すことができない、とテレビで発言。
以後、荒れた市民の怒りは富裕層に向かう。
「腐った世と闘うピエロ」対「金持ち」の図式がいつのまにかできてしまう。
市民はピエロの仮面や扮装をして暴力的なデモを開始する。

このあたりからアーサーを取り巻く世の中が目まぐるしく変わる。
もともと不安定だったアーサーの心が変化を加速する。
恋人ができる警察に負われる母が倒れるコメディの舞台に出る。
舞台の映像が有名なテレビショー司会の目にとまる出演依頼がくる。
実の父親がトーマス・ウエィンと知らされる会いに行く妄想と一蹴される。
昔の母の入院カルテを見る養子縁組された身元不明の子とわかる。
先天性の病気でなく母の男友達に殴られて脳損傷を受けたと知る。

母は虐待を黙ってみていた。母を枕で窒息させる。
恋人は彼の妄想でただの隣人だった。黙って去る。
銃をくれた仲間に陥れられたと知る仲間を射殺する。

テレビショーにピエロ姿で出演したアーサーは司会者に
「ジョーカーと呼んでくれ」と言う。
ジョーカーはビジネスマンを殺したのは自分、と告白し、
「そりゃ笑えないジョークだ」と言う司会者に
「あんたはボクを笑いものにしようとして呼んだ。ボクたちのために何も考えてない」と答え
司会者を射殺する。
逮捕されるが、混乱した街でパトカーは事故を起こし、
アーサーこと「ジョーカー」はピエロに扮した市民たちに救われる。

ひしゃげたパトカーの上に立って、優雅に踊るジョーカー。

哀しい物語だった。
人が壊れていく話。
壊れようとしていないのに、アリ地獄の砂に沈んでいくように壊れていく。
這い上がることをあきらめ、むしろ砂の底の世界で暗黒の世界の住人として
楽しく生きることを選択しても、責めることはできない。

たったひとりでも、アーサーの言うことをゆっくり聞いてあげられる人間がいれば
どうにかなったかもしれないが、
アーサー自身が自分の中の闇に引き込まれるほうを選んでしまったあとでは無駄なこと。
アーサーの中の闇は不満を持つ市民たちの心の闇と重なり、
ゴッサムシティを覆う大きな厚い闇になる。
そしてバットマンが登場するわけだが、現実社会にはもちろんバットマンはいない。
バットマンですら、自分がより大きな闇になることで市民を団結させるしか選択肢がなかった。
現実社会では、より大きな闇が現れれば弱い人間はそちらに吸収されていくだけだろう。

そうなったとき自分はどうすべきなのか、何度も考えている。





問題作『ジョーカー』が記録破りの大ヒット!脅迫や自主避難など各地で混乱も【全米ボックスオフィス考】
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=14&from=diary&id=5818092
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