信じたいことを信じるなら他人を巻き込むな

ワシははっきり言えば、この記事に出てくる「ダメ医者」よ。
ガンとはっきりわかっているのに漢方や自然食品にたよる、
こどもにワクチンを受けさせないで「自然な免疫」が一番と言う、
そういう人間とはもう、話をする気が起きないからね。
今の状態をなんとかもう少しましにしたい、という真剣な気持で
ワシのところにくる多くの患者さんを、こっちも持てる知識と技術で真剣に相手する。
そういうやりかたしかできないのよ。

たとえば「自宅で友人に見守られながら自然なお産」をしたいという患者さんが、
家でお産にともなう大出血を起こして救急車で来院したら？
もちろん全力で助ける努力をする。
輸血だの帝王切開だの赤ん坊をみてくれる手配だの、
必死でやる。

でもその間に、ワシが見る予定だった患者さんはいったいどうなるの？
その日、予定で子宮筋腫とか帝王切開とかの手術だった患者さんを
おしのけてその、自分勝手な思い込み患者をみるんだよ？
その日の予定手術ももちろんこなすけど、
最終的に、5時には終わっているはずだった最期の手術が午後１０時に終わったりする。
患者さん家族も待たせるし、看護師は時間外の仕事が増えるし
（手術後はしなきゃなんないことがたんとある）
何より、ワシら医者の休憩時間などふっとび、残業時間が激増、
疲労も激増、燃え尽きて職場を去る医師を誰も止められない。

自分の信じたいものを信じる自由はあるよ。
でも、その自由でオウム信者さんたちはいったい何をしたんだっけ？
自分の信じたいものを信じるなら、他人に迷惑をかけないでほしいのよ。

一番簡単なのは「エホバの証人」の信者さんかな。
この方々は、輸血拒否が当たり前になっていて、
受診した時点で「絶対にわたしに輸血をしないでください」という書類を持参し、
医師にもサインするように求める。
今みたいな個人開業ならそもそも輸血を院内ですることはないので関係ないが、
これまでいくつも勤務したいわゆる地方中小大病院ではどこでも
そこのトップに聞くと「そういう書類にはサインできない」と言うし、
「命を救うのに必要なら輸血します」と言うし、
場合によっては「当院ではあなたさまの診療はできません」と言う。
助けられる手段があるのに使わないって、そんなの医者のやることじゃない。

ふつうに妊婦健診うけて病院でお産してたら何事もなく、
もしくは何かあっても初期で対応できて大事にならず、終わったお産を
自分勝手な思い込みで「とてつもない難産、後悔するような分娩」にしたやつを
産科医は絶対に許せない。

追記；

もちろん悪いのは患者さんじゃなく、だましたやつらだよ。
でもこれだけいろんな情報があふれている社会で、
きちんと調べたりしないで、自分が好きな気に入った都合のいい情報だけ信じるのは
いいこととは思えない。

■「ニセ医学」を信じてしまった患者を救えない、“正論”医療の現実
(AERA dot. - 01月11日 07:01)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=173&from=diary&id=5452276