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2020年02月16日08:25

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私をどこで拾いました?


練馬区はいまだに道が良くわからない。
だが無線で呼ばれて、行けと言われたら行かざるを得ない。
夜、結構遅い時間に、ある飲み屋さんの前に無線で呼ばれた。
行って待っていると、xxでーす、という声が聞こえ、4人の男女がこちらに歩いてきた。
2組のアベックで、それぞれの家まで送っていった。
始めて通る道で、2組目の男の人が親切に曲がるところを全部言ってくれたので迷うことなくマンションに送り届けた。

そのマンションにつくちょっと前に通った道で、街灯も少なくコンビニなどの店もなく車通りのほとんど無い道で男の人が立っていて、通ったときにこちらに向かって手を挙げた。
あー申し訳ない別のお客が乗車されているので・・・と心で謝りながら通り過ぎた。
2組目をマンションまで送り届けた後、もしかしたらまだあそこでタクシー待ちしているかもしれない・・・と思い、引き返してさっきの場所に向かってみた。

本当に車のほとんど通らないような道だったので、やはりさっきの男の人がそこでタクシーを待っていた。
停まってドアを開けると、助かりました〜といいながら乗り込んできた。
私は一応、この辺りは全然道わからないですけど大丈夫ですか?と伝えると、
「練馬駅の方までいってください、道はお任せします、着けばいいので大丈夫です多少間違えても。」
と言われた。
では、ナビに入力してナビ通りに行かせてもらいますねといって出発した。

「そのナビはタクシー専用のナビなんですか?」
という質問から始まって、少し会話をした。
ある程度進んだところで、
「あーここかぁ、じゃあそこの道右に曲がって、突き当りを左で・・・」
と、指示をくれるようになった。
ありがとうございます、助かります、というと、住所言うので入れてもらっていいですか?と言われた。
さっきはナビに、練馬駅を入力して進んでいたので、目的地がちゃんと住所でわかるなら私としてもありがたい。
早速言われた住所をナビに入れて出発した。

道のりの半分は超えたかなというくらいの時に彼が言った。
「この先にトヨタがあるのでそれが見えたら左に曲がってください。」
わかりました、トヨタですね。
と言って進んだ。
ナビを見ると、あと信号3つくらい先の右手に東京トヨペットの文字が見えた。
そして、そこを左に曲がるとナビの目的地まで直線で着くようだった。
少し進んで、右手に東京トヨペットが見えた時に、その男の人に、
トヨタが見えますので、この信号を左でよろしいですか?ときくと
「いや、もっと先にトヨタが見えるんです。」
え?ここじゃなくてですか?
「そうです、右手にトヨタってあるので、そこを左に曲がってください。」
けっこう徐行気味に進んでいたのだが、ここじゃなくてもっと先と言われたのと、練馬はさっぱり道がわからないのもあって、この先に別にもう一件トヨタがあるのかもしれないと思い、進んだ。
徐行とまでは行かないまでも少しゆっくり進んで、
右手に、トヨタ、ですよね・・・ありませんねえ・・・
「右手にトヨタがあるんです。もう少し先かな?あれ、まだかな?おかしいなあ。」
というので、さっきのところに右手にトヨタ、ありましたよ?あれじゃなくて他にも?
「え?じゃあそれかなあ。いいです、じゃあこのまままっすぐいってください。」
わかりました。
「大丈夫ですよ、間違えたからって怒ったりしませんから!」
(私のせい?)
一応、ありがとうございます。と言っておいた。

少し進んでいくとトンネルに入った。
「このトンネル長い奴ですよね?」
そんなに長いって程じゃないとは思うのですが・・・
と言っている間にトンネルから出たので、このまままっすぐで平気ですか?と聞くと、
「そしたら適当に左に曲がってください。」

目的地の住所を入れてあるのだが、ナビはまっすぐ行けと言っている。
ただナビは大きな通りを優先して指示するので、ショートカットできる細い道とか、ここを通ればまっすぐいけるけど、細い、って感じの道はほぼ除外して指示して来るのだ。
だから男の人に言われるがまま左に曲がった。
とりあえず曲がれば、ナビは、そこからの道を指示してくるので、結果目的地にはつけるようになっている。

その後少しの間、男の人が指示して来なくなったので、ナビ通りに進んで少し大きな通りに出た。
その大きな通りを走っていると、
「ここ環七ですよね?」
と聞かれた。
いえ、ここは目白通りですね〜というと
「え?うーん、環七じゃないですか?」
んー、たしか目白通りのはずですが・・・
「あれほんとだ、目白だ・・・あれー?」

少しの沈黙のあと、おもむろに男の人が言った。
「運転手さん!」
は、はい。
「運転手さん、私をどこで拾いました?」
え?
「私何処から乗りました?」
えっと、練馬の・・・
「端っこの方ですか?」
た、たぶん・・・
「おかしいな、おかしいなあ。」
・・・
「何してたんだろ、おかしいなあ・・・」
何やら自問自答めいた独り言が始まった。
どうやらいろいろ記憶がないことを自覚し始めたようだった。
確かに乗ったときからちょっと、うつろかなあ、と思っていたが、受け答えもはっきりしていたし、住所も教えてくれたのでまったく普通に見えていた。
ところがさっきの瞬間は、自分がタクシーに乗っている事自体に驚いていた様子だった。
とりあえず自宅に向かっていることは理解したようで、最後の1キロくらい、道を指示してくれた。
目的地に着いたので、こちらでよろしいですか?ときくと、
「大丈夫です。カードで払えますか?」
では後ろにある端末で、と言ってやり方を伝えた。
決済も終わって、カードを財布にしまいながら、首をかしげていたので、
ひょっとして、記憶がない感じですか?と聞いた。
彼は半笑いで、
「そうなんです・・・」
と言って降りて行った。

あのまま私があの車通りのない道に戻らなかったら、この人は一体いつまであそこでタクシーをまっていたのだろうか。
まあ夜でもそんなに寒くなくなったので、平気だったかもね、と思った。

その後、世田谷に呼ばれて、めちゃめちゃ具合の悪そうな男の人を病院まで乗せていったのは、また、別の、お話。

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