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2021年04月11日21:43

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地球上のトリチウムのインベントリー

地球上にトリチウムがどの程度あるのか考えてみましょう。
(何年か前にほぼ同じ問題を大学院入試で出題しています)

地球上では、超高エネルギー(10^20 eV にも達するプロトンなど)の宇宙線によって大気上空で核反応が生じ、トリチウムや炭素14などが毎年大量に生成されています。
その量は、トリチウムが 1×10^18 Bq, C-14 が 1.3×10^15 Bq にも達します。

その一方で、トリチウムは半減期 12.3年、C-14 は5730年で徐々にベータ崩壊していきます。
ある時点での存在量(原子の数)を N0, 半減期をT とすると、時間 t が経過した後の存在量 N は
N = N0 exp(-λt)
と表され、ここで λ = 0.693/T です。(0.693 = ln(2) )

単位時間あたりの崩壊量 は、N の時間微分値ですから
dN/dt = -λN
となります。
つまり、単位時間に崩壊する量は、その時点での存在量に比例します。
T の単位として秒を取れば、-λN は Bq となります。
一年間で生成するトリチウムの量は 1×10^18 Bq ですが、
これを生成するトリチウムの原子数 Nc と考えると、λを単位を秒で考えた場合の λs として
λs Nc = 1×10^18 となります。

ここで一年で全地球上で崩壊する数を考えると、λを年で考えた場合のλy を用いて
dN/dt = -λy N = -Nc
と表せます。
これによって全地球上のトリチウムの原子数 N は N = Nc / λy = 1×10^18/ (λs λy)
となります。
後は、全地球上のトリチウムの放射能(インベントリー)を A [Bq] とすると、
A = -dN/dt = λs N = 1×10^18 / λy となり、
λy = 0.693/ 12.3 ですから、
A = 1.8×10^19 Bq と求まります。

ここで、1F の処理水中のトリチウムの総量を多めに見積もって1000兆Bq = 10^15 Bq と言うことで、元々地球上に存在する量の1万分の一以下の量にしかならないことが分かります。インベントリーが増えると、単位時間に崩壊する量も増えますから、次第に平衡量に戻ります。

ちなみに1954-1963年の水爆実験では、天然の生成量の200倍のトリチウムが放出されたとのことです。
https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-01-03-08.html
さすがにこれだけ増えると、平衡量に戻るのにかなり時間がかかっています。

また、トリチウム 100Bq を経口摂取した場合、化学形が水の場合で 1.8×10^-8 mSv, 有機物の場合で 4.2×10^-8mSv の内部被曝をします(摂取後50年間の被曝量の合計)。
ちなみに、Cs-137 の場合では 1.3×10^-5 mSv と1000倍程度影響が異なります。

これは、トリチウムはわずか18.6keV のベータ線しか放出せず、半減期12.3年と短く、さらに体外に排出されやすいため相対的に影響が小さいためです。

リスクを低減するためにいくらでも経済的負担を強いても良いのであれば、
コロナ禍はとっくに収束しています。
リスクとコスト、その両立を考えなければならないことを、今こそよく考えるべきでしょう。



■海洋放出方針に抗議=原発処理水、市民団体が声明
(時事通信社 - 04月11日 18:00)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=6479999
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