年末、ラピュタにて、『紅の翼』なる映画を見た。『紅の豚』ではない。
1958年、中平康(なかひらこう)監督の作品。主演は石原裕次郎。
この2年前、裕次郎は、やはり、中平康の映画『狂った果実』に出て、鮮烈な印象を世間にあたえ、翌1957年には、井上梅次(うめつぐ)監督の『嵐を呼ぶ男』の主演で人気を不動のものとした。
その翌年の映画である。
………
古い邦画を見ていると、世の中、変わらないものだ、と首肯する一方で、ぐるっと常識が大転換していて、軽いタイムスリップ感覚に陥ることがある。
自分の子供時代を思い返すと、確かに、さもあらん、と納得し、記憶の中の大人たちを見回すのであるな。
たとえば、旅客機のパイロットが煙草をふかしながら操縦している画なんぞは、当時の誰もが何の疑問も抱かずに撮影しているらしいのが奇妙に映る。
映画の登場人物たちは、平気で、「きちがい」なんて言葉を吐くし、新聞記者たちは、こぞって、飛行機事故の乗組員の遺族の写真を撮り、コメントを強要する。
………
そして、何より意外だったのは、
石原裕次郎の歯並びがガチャポコ
だったことだ。
まったく、物事に対する人の感じ方、というものに、絶対はないのだ、と、諸行無常を感じてしまうのよ。
ログインしてコメントを確認・投稿する