故中村哲医師が遺したものは限りなく大きい（無限大）。
氏は多感な青春の時代に読んだ内村鑑三の「後世への最大遺物」の「インパクトは相当に大きい」と綴っている（「天、共に在りーアフガニスタン三十年の闘い」。以下主として同書より）。中村医師の生き方そのものも「後世への最大遺物」だと思う。
氏が私たちに託した遺物＝バトンは何だろうか。
私の分限ではごく一部しか書けないが、以下のことは重要だと思う。
� 擇匹鵑平佑任△辰討癲△い里舛反祐屬箸靴討虜把禪造寮験茲鮗蕕襪海箸�総ての出発点】
上記書籍の序文で、こう記している。人生観を集約しているように思われる。
「人の陥りやすい『人為の世界観』を超え、人に与えられた共通の恵みを嗅ぎ取り、不安と暴力が支配する世界で本当に私たちに必要なものは何か、不要なものは何かを知り、確かなものに限りなく近づく」
ヒマラヤ山脈の西端にあるアフガニスタン・パキスタン国境地帯の山々にあこがれて行った氏が目にしたものは、膨大な無医療地帯でハンセン病を筆頭に病に倒れて行く人たちの群れだった。ペシャワールに診療所を開設したのを端緒に、長年かけてソ連やアメリカ等のミサイル攻撃の下で数々の診療所を作った。米軍の猛攻撃を受けて総ての外国支援団体が去った無医の首都カブールでもタリバン政権の許可を受けて三つの診療所も作った。
並行して、地球温暖化で大旱魃になり餓死し、あるいは（戦争や内戦のためのあるが）２００万人を超える難民になった人たちを呼び戻すたに草も絶えた地帯に灌漑用水路を造った。いずれもいのちと最低限の生活を守るためだった。
氏は、共に苦闘し創り上げた緑地化の成果に狂喜し乱舞する住民たちの様子を繰り返し綴る。日本が忘れたかのような、村ごとのいのちの躍動。
宗教、民族、国境を超えた人類の根源的で普遍的な真実を氏は訴えている。
�◆據慇菴聞顱戮凌諭垢了廚ぞ紊�った偽善と闘った】
1979年からソ連は「封建制を壊滅させる」という名分で、次いでアメリカは「自由とデモクラシーの国家を造る」という名分でアフガニスタンを攻撃した。村落共同体の農民が持つのはせいぜい旧式ライフル程度。タリバンといえど対戦車砲と多少のヘリ程度。
日本はイージス艦を出し米軍に給油してミサイル攻撃を支援した（先進国の報道にあるピンポイント攻撃はウソ。無差別爆撃が実態）。
米・NATO・日本は戦争に勝った。カブールの女性はブルカを脱ぎ始めた。男女平等！
一方、少しはなれた圧倒的な地帯は住民の唯一の居場所であるモスクや子供たちが学ぶ学校（マドラサ）の多くが破壊され、少女を含む勉強どころではなくなった。カブールでは夫、親、兄を殺され収入を失った寡婦たち、女性たちがスラム街に住み売春婦となった者も少なくなかった。すぐ隣に増えたホテルでは先進国の人たちとアフガンの上流階級の人たちがアフガンの「自由と解放」を祝い、スラム街に通った。
山だらけの地帯で宗教にすがって数千年生きてきた人たちが、いきなり先進国の思想に接すれば警戒するのが当然ではないか、郷土愛は世界のどこでもあるはずだ、人権や民主主義を主張することは必要だがそれは住民が時間をかけて学ぶことだ、先進国のやり方は報道を含めてあまりに一方的であり偽善ではないかと氏は言う。
��【先進国がもたらした地球温暖化の結果、アフガンの大旱魃と大洪水で大量の死者を出している。人間は「天」＝自然の摂理から離れては生きられない】
（先日私が見た新聞によれば、温暖化のために土地を離れた世界の人数はこの5年間で年間２０００万人平均。そのうち「後進国」のひとたちは「先進国」の人たちの1500倍。）
氏が待ったなしのいのちの危機として訴えているのは、戦争と地球温暖化の2つ。
�ぁ數塾呂篝鐐茲任覆�非暴力・非武装が人々の心を開き信頼関係を醸成しひいて自分たちの安全を守るという修羅場の体験からくる確信】
前回の拙日記記載のとおり。
日本の家庭内暴力の話をすると、アフガン人から「日本はそんなに治安が悪いのか」と驚かれるとのこと。
�ァ擲惴盛坩戝廚亮汰�】
氏の特性は、葬儀でご子息も言われたが「行」の実践にあると思う。目の前にいる人の幸せを心から欲すると行動せざるを得ない。そのために例えば用水路建設に必要な数学の教科書を長女から借りて「学」。諸活動の実現のために必要なので「言」。
日本の教育の最大の欠陥だと思う。日本はますます衰退する（私見）。
�Φ�飾では生きられない現地から偶に帰国するので敏感に気が付くのだろう、日本のフィクション化の加速を繰り返し指摘している。指摘は大変控え目だが、リベラル・左翼を含めて評論家風の観念論を忌み嫌っている。
「平和」とか「人権」とか「平等」とか「愛」とか。
私も観念論を振り回しているところがある。
その自覚さえなく。
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