久々の音楽会は７月の「藤田真央ピアノリサイタル」

コロナ禍で、あらかじめ購入していた音楽会やオペラ公演のほとんどが中止になっていましました。唯一、延期になっていたのが３月の藤田真央ピアノ・リサイタル（＠佐川文庫）です。彼は私が嘱望している若手ピアニストのひとり。私が彼のピアノ・リサイタルを聴くのは、これで3回目。すべて水戸の佐川文庫の公演です。彼の演奏は、また聴きたいと思わせる不思議な何かがあります。（ちなみに東京では彼のリサイタルのチケは入手困難だそうです。）

はじめて聴いた2016年秋は、中村紘子氏の推薦による実質的なデビューリサイタルでした。（中村氏はリサイタルを前にお亡くなりになりました。）その時のプロブラムが以下の内容。難曲も軽々とこなし、耳が喜ぶような演奏で舌を巻きました。

ベートーヴェン：ピアノソナタ第１４番「月光」嬰ハ短調　作品２７−２
バッハ＝ブゾーニ：シャコンヌ　ニ短調　BWV１００４
ショパン：バラード第１番　ト短調　作品２３
ショパン：ポロネーズ第６番　変イ長調「英雄」作品５３
リスト：ハンガリー狂詩曲第２番　嬰ハ短調

２回目が2018年冬。前年にクララ・ハスキル国際ピアノコンクールで優勝したので、ある意味で凱旋公演となりました。プログラムは前半がドイツ音楽と後半がショパンという対比構成。前半のモーツァルトの８番とベートーヴェンの32番、どちらも「苦悩からの解放」という共通点がありますね。この時、左手のバスの響きに重みがあってビックリ。音楽的な土台がしっかりとしたことに彼の成長を感じました。それと彼の良さのひとつは、誰もが知っているような有名な曲でも、はじめて聴いたかのような初々しさとフレッシュな印象を人に持たせるのは、彼が生まれ持ったテンペラメントだと思います。

モーツァルト：ピアノソナタ第８番イ短調K.310
ベートーヴェン：ピアノソナタ第３２番ハ短調op.111
ショパン：アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズop.22
ショパン：ピアノソナタ第３番ロ短調op.58
（アンコール）
シューマン＝リスト編：献呈
ショパン・ポロネーズ第６番変イ長調 op.53「英雄」
モシュコフスキ： 火花（8つの性格的小品 作品36の6）
ショパン：夜想曲第20番嬰ハ短調（遺作）

番外として、エリソ・ヴィルサラーゼの公開レッスン＠東京音大で、彼が弾いたシューマンの「暁の歌op133」も聴いたことがあります。シューマンの最晩年の渋い曲。彼の演奏は透明感のある美しい演奏でしたが、エリソには「あまりにもキレイに弾きすぎる。もっと絶望した気持ちで弾きなさい」という指摘に、苦笑いを浮かべたように見えたｗ。ただネイガウス門下のエリソ指導で、ロシア・ピアニズムにふれたことは確かのようです。それが昨年のチャイコフスキー・コンクールの2位とうい結果だったのかなと思っています。

そして３回目。当初、今年３月に予定されていたのは、「オール・ベートーヴェン・プログラム」でした。生誕250年記念の年にはふさわしいプログラム。しかしコロナ禍で7月に延期されるということでした。（彼が弾く8番、聴きたかったなぁ。）

ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 Op.13 「悲愴」
ロンド Op.51-1
ロンド Op.51-2
ロンド・カプリチオ Op.129
ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 Op.27-1
ピアノ・ソナタ第23番 へ短調 Op.23「熱情」

先週、佐川文庫から届いたメールには、7/9の延期公演は「密を避けるため2回公演（昼・夜）へ変更」とありました。私は、なんとなく落ち着いて聴ける「夜の部」にしていただきました。プログラムは以下のように変更。正直、ベートーヴェン・プロが聴きたかったのですが、仕方がないですね。2回目に聴いたリサイタルと共通なのは、前半がモーツァルトとベートーヴェンとし、後半がショパン等の冴えたピアニスティックが要求される楽曲。「子供の情景」がラストを飾るのって、私ははじめてかも…。 どのような演奏になるのか想像ができません。しかし、あのリヒテルから「世界最高のシューマン弾き」と言わしめたエリソ・ヴィルサラーゼの指導を受けた藤田真央氏のシューマンには大注目ですね。楽しみです。

モーツァルト：ピアノ・ソナタ第12番　ヘ長調 K.332
ベートーヴェン：ピアノ・ソナタ第13番　変ホ長調 Op.27-1
ショパン：ワルツ　イ短調 Op.34-2
ショパン：ノクターン第18番ホ長調 Op.62-2
ショパン：舟歌　嬰ヘ長調 Op.60
シューマン：子供の情景 Op.15