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2020年04月04日12:16

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ひさびさに買ったアルゲリッチのCDの話し

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私が3~4月に聴きに行く予定だった音楽会やオペラは、コロナ禍の影響で中止になってしまいました。外出も極力ひかえているので、溜まっていた業務を自宅アトリエでコツコツとこなすかたわら、ネットでおもしろそうなCDを買い漁っています。元手となるのはチケットの払い戻し金。治ったと思っていた「ポチ買い病」が再発したようです。

今週、マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)とチョン・ミュンフン指揮&フランス国立放送フィルがエイズ世界デイのチャリティコンサートで共演した2001年12月のシャトレ劇場におけるライブ盤をネットで発見しました。アルゲリッチといえば、学生の時は私のアイドルのひとりでしたが、ソロ活動をしなくなってから興味を失ってしまったので、彼女のCDは20年以上買っていませんでした。
しかしながら、このようなCDが存在していることも知らなかったし、コロナ禍になる今にあってエイズ世界デイのチャリティCDということが心に引っかかり、かつ演目がシューベルトの未完成交響曲とシューマンのピアノ協奏曲イ短調という私の大好物であったので、思わず“ポチッ”とやってしまいました。

このCDがあまり知られていなかったのは、エイズ世界デイのチャリティ・コンサートだったため、当初はフランス・グラモフォン社が国内限定盤として販売し、海外へ出回らなかったからのようです。そのCDの評判があまりにも良かったため、タワーレコードが販売権を得て“限定盤”として2008年に製品化。しかし今でも買えたということは、やはり知られていないということでしょうか。検索してみても、このCDのレビューを書いている方もほとんどいません。実際に私が聴いてみて驚嘆。素晴らしい演奏だったのでレビューする気になりました。

このCDは未完成交響曲からはじまります。指揮者のチョン・ミュンフンの実演を聴いていないのですが、気になっている指揮者のひとり。(東京フィルを指揮して評判がよいことは訊いています。)CDで聴く限りでは、この人の音楽の本領は、ただならぬ緊張感にあふれる弱音に見られた気がしました。金管の強奏などによる外形的な派手な表現よりも、内側から込み上げて何かを素直に響きに置き換えている感じ。特にこの未完成交響曲では、冒頭の低弦の最弱音の妖気や、美しいメロディラインを長いフレージングと遅めのテンポで慈しむように歌っているところが印象的でした。

CDは未完成交響曲の第2楽章が静かに終わると、その沈黙を切り裂くようにシューマンのピアノ協奏曲がはじまる編集になっています。名刀の一閃で邪気を切り裂いていくかのように、鋭角的な符点が下降するフレーズはアルゲリッチにしか弾けないでしょうねw。この曲は好きなのでCDは7~8種類持っていますが、冒頭の切れ味度は、このアルゲリッチ&チョン盤は最高位かも。30代後半のアルゲリッチは78年にロストロポーヴィチ指揮ワシントン・ナショナル響とこの曲を録音しています。この演奏、私には型にはまったような無難な凡演に聴こえたので、その後、全然、聴いていません。しかし、この2001年の還暦アルゲリッチのライブ盤には満足しました。天衣無縫の生気に満ちた演奏。鋭い打鍵で自由奔放な演奏はこの曲によくフィットしていると思いました。まさに圧巻のアルゲリッチ節が聴けました。テンポの緩急の具合もなかなかよく、指揮者とオケはいい仕事をしていたと思います。曲が終わると同時に、ブラボーの連呼と万雷の拍手も収録されていました。このスリリングな演奏に聴衆も大満足したようですが、CDで聴いた私も満足でした。
このCDを通しで聴くと、未完成交響曲→シューマンのピアノ協奏曲という合計5つの楽章の流れの中に不安と苦悩から勝利へという強いベクトルが潜んでいて、どことなくベートーヴェンの交響曲の構成と似た印象もちょっと感じましたw。
ちなみにシューマンのピアノ協奏曲で私が最も好きな演奏は、ラドゥ・ルプーのピアノ、アンドレ・プレヴィン指揮&ロンドン響73年のCDです。透明感と瑞々しさがある演奏です。2001年のアルゲリッチ盤を“炎”とするならルプー盤は“水晶”でしょうか。

余談ですが、このCDのオケはフランス国立放送フィル。実は初めて知った名前です。フランス国立管弦楽団のまちがいじゃないか?と思ったぐらいです(失礼)。しかし別団体!フランスのオケは色彩的に華やかなところが多いけれど、このオケはドイツ的なしっとりとした響きがしました。wikiで検索してみたら、かつてはマレク・ヤノフスキが首席指揮者だったことを知り、このような響きがすることに合点しました。それと未完成交響曲とピアノ協奏曲、どちらも前奏の後にオーボエによる印象的な独奏がありますが、とても上手かった。

2つ目の余談。5月に水戸芸術館における水戸室内管弦楽団の定期で、アルゲリッチが小澤征爾指揮でシューマンのピアノ協奏曲を演奏する予定でした。しかしコロナ禍で中止になりました。私は“今の小澤征爾”の指揮は敬遠しているので当初から聴きに行く予定は無かったけれど、アルゲリッチとチョン・ミュンフンだったら聴きたかったです。

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