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2019年12月08日02:02

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「ターミネーター:ニュー・フェイト」みました

やっと観ました(相変わらず観るのが遅い)

世の評価は芳しくないらしいですが僕はすごく面白く観ました。
先に見た友人が「まあフツー」と言ってハードルを下げてくれたせいもあると思うけど、これはいいよ!
ただ期待値に対して「まあフツー」になるのもよくわかります。
みんなもっと「デデン!デン!デデン!」でもっと「グワーッ!ドカーン!」だと思ってたんでしょ?
違うから

僕は3、4、5作にもそれぞれ美点があってそれぞれ好きなんだけど、本作はそれらとはベクトルが違いますね。
観るまでは僕も「いまさらジェームズ・キャメロンがリブートするのは何故なのか?」って思ってました。
 ターミネーターから派生するMore Ideaはもうやり尽した感がある。
 だからわざわざ彼が名乗りを上げるのは「もっとすごいアクション映画にする!」とかじゃないハズ。
 3、4、5作では忘れられてたモノ。
 James Cameron'sターミネーターにあって他には無かったモノを描くためであるに違いない。
そう思ってました。
それは“サラ・コナーの不在”ですよね。

ジェームズキャメロンが描き続けるモノってなんだろう?(ゴツくて強い女性とかそっちじゃなくwww)
「アビス」「タイタニック」「アバター」などなど(トゥルーライズは置いといて)どの作品にも通底するのは「抗えない運命に抗うひと」の物語だってことだと思います。

みんなターミネーター(特に2)が好き過ぎて、たぶん皆さん、ターミネーター(特に2)何度も見過ぎなので忘れがちなんだけど、あのテーマ曲「デデン!デン!デデン!」は“恐怖の抹殺マシーン”のテーマじゃないからね。
ターミネーターが襲ってくるシーンでは違う曲がかかりますからね。
「デデン!デン!デデン!」はアレは“抗えない運命”のテーマですよね。そういうシーンで流れますよ。
ジェームズ・キャメロンのターミネーターが描くのは「避けようのない運命の徹底的な非情さ」と「それでも運命に抗うひとびと」なんだと思います。

一作目のサラ・コナーは自分のまったく預かり知らないところで定められた運命に理不尽に翻弄されます。
だけど最後にそれを受け入れて自ら闘うことを決意します。ここが運命に抗うところです。
二作目ではすっかりラジカルになったサラ・コナーが他のことには一切構わずジョンを守ります。
息子だからじゃなく人類の未来のためにはそれしかないから…(これが非情な運命です)
だけどダイソン博士の殺害を思いとどまり、それとは別の闘いに未来を賭けます。ここが運命に抗うところですよね。
ジェームズ・キャメロンのターミネーターでは、このサラ・コナーの過酷な人生の“強度”が徹底的に描かれます。
この死生観というか原理みたいなものがテーマ的に作品を貫いていて、その強度こそが作品に圧倒的なエモーションを与えていたんだと思います。
だからそこを踏まえて「ニュー・フェイト」を観ると、ジェームズ・キャメロンが改めて描き出そうとしたモノが何であるか?その新たな語り口のオモシロさに気付けると思います。
「ニュー・フェイト」(原題は"Dark Fate")ってなんのことだ?って考えながら観たらいいと思います。

以下はネタバレ



アクション映画的な面白さはこれまでのシリーズ作を超えてはいないと思います。
アクション映画としてのアイデアはこのシリーズではもうやり尽されていると思いました。
あと昨今のVFXの進歩という点から見て本作にとりわけ斬新なものはなかったということだと思います。
とはいえ決して引けを取る映画じゃない。
分離してコンビネーションで戦うRev-9はユニークで印象に残るし、一方がエンドスケルトン型で一方がリキッドメタル型っていうのもいい。
ある意味、使いまわしのアイデアでここまで見せるのが意外な面白さだったと思います。
また想像を超えるようなアクションシーンは無いものの、既存のテクニックでここまでテンションを上げてくるか!っていうハイウェイの戦いや墜落するC-5のなかでの無重力アクションも良かった。
ここいらはたぶん監督のティム・ミラーのセンスの良さだよね。


「ターミネーター2」のストーリー的な構造が一作目のリフレインだったのと同様に、本作でもやってることはまたもや同じだったwwwww
何も知らない主人公が未来からの刺客に狙われる。
それを助けにもうひとりが未来からやってくる。
あとはひたすら逃げる!逃げる!
最後に反撃する!

なぜこの話を繰り返すのか?
っていうとそこにテーマがあるからだよね。
やはりジェームズ・キャメロンのターミネーターは「避けようのない運命の徹底的な非情さ」と「それでも運命に抗うひとびと」を描く映画だった。
本作ではサラ・コナーのポジションだったところに新ヒロイン、ダニー・ラモスが挿入されて旧作をまたもやリフレインする。
そしてそこに、全てを終わらせて全てを失った旧ヒロイン、サラ・コナーを登場させて対比させ、さらにもう一度、運命に抗わせる!
このストーリー、すごく面白いよ!


今作のサラ・コナーはいよいよヤサグレたキチガイババアになってる。
彼女が人類を救ったことは誰も知らず、そのために投げ捨てた人生でたったひとつ守りたかった息子も奪われた。
彼女にはもう何もない。
何もないのに誰かが新たなターミネーターの出現場所と時刻を知らせてくる。
「ジョンのために」
ムカつくよね。彼女にとってはもう何の意味もないのに。
こんな壮絶な人生ってあるか?


だけどそれを送り寄越してるのはジョンを殺したT-800だった!
何のために?
「彼女に生きる目的を与えたかった」

ここがゴリゴリのハードSF野郎であるキャメロンらしいところだと思う。僕個人的にはここがいちばん刺さった。
このターミネーターは人間性を獲得してるんですね。
これどういうことか?

スカイネットはT-1000のバックアップにT-800を送り込んでたっていう設定です。
これって潜入型ターミネーターでT-1000より性能が劣る分、何年も、場合によっては何十年も人間社会に潜り込んで任務遂行を果たすようにプログラムされてるんでしょう。
だから人間社会に溶け込むよう自己学習するんだよね。
そのT-800はジョンの抹殺をやり遂げてしまう。
スカイネットが台頭する世界線が消滅した後に。
任務遂行後の指令はプログラムされておらず、追加指令ももう来ない。
さてどうなるか?

ミッションから解放されて彼は自由になっちゃったんですね。
機能停止しても良かった。
でも彼は人間社会をさらに学習するために人間として振る舞うことにした。
自由だから。
その結果「持続性を優先するなら他者に手を貸し協力する方が合理的な選択だ(ゲーム理論でいう協調戦略)」を学んだんですよね!

ジェームズ・キャメロンはAIに“悪意”というものは無いと考えてるわけです。
スカイネットにもリージョンにも“悪意”はない。
AI自身には“悪意”も“善意”も無いんです。
誰かがAIに指令(たとえば平和の達成とか)を与え、その最適解が“人類の抹殺”だっただけなんです。
これがジェームズ・キャメロンの考える非情の世界です。
無情といってもいい。

指令が無くなり目的を無くしたT-800は自由意思で持続する事を選択した。
そして学習の結果、無情にも「他者と協力する」っていう最適解を得て“人間性”を獲得するんですよ!
だから「人間のそれとは少し違う」んですよ!

一方でAIが人類を抹殺しようとし、もう一方でAIが人間性みたいなものを獲得する。
それを同じ映画の中で描いて、絶望にも希望にもなり得るAIの可能性をも示してしまう。
こんな娯楽映画で?
このストーリー、すごく面白いよ!
ここはSFとして出色の出来だと思います。

サラ・コナーに「生きる目的を与え」ようとした彼のそれは善意じゃない。
「少し違う」んですよ。
「人間という種の目的が持続する事なら、他者のために生きる事こそが最適解」だからなんですよ。
サラの生き方が間違ってるからT-800は訂正しようとしたんですよね。
こんな壮絶な人生ってあるか?


その話に絡んでくるのが強化人間、つまりサイボーグのグレースです。
出たよ!ジェームズ・キャメロンの大好きな「ゴツくて強い女性」だよ!wwwww
このキャラクターのキャラ立ちがスゴイですよね。
強くてカッコよくて健気なヒロイン。
みんなグレースのことは大好きになると思う。
これがまたカイル・リースのリフレインですからね。
過酷で非情な運命を受け入れて闘うひとだ。
このテーマを背負ってることで彼女のキャラが強く印象付けられる。

人生にムカついてイラついているサラ・コナーは最初はグレースと反目してるけど、自分の命を引き換えにするような彼女の行動が気付かせる。
グレースが守ろうとするダニーはかつてのサラ・コナー自身であり、息子ジョン・コナーでもある。
ダニーを救うことは自分を救うことであり、生きる目的を取り戻すことであると。
グレースから、そしてカールことT-800からダニーを託されることで、サラは“そのせいで何もかも失った闘いにもう一度人生を投げ入れる”ことを決意するんだよね。
こんな壮絶な人生ってあるか?

だから本作の戦いでの彼女のポジションは脇役なのだけれど、作品のテーマはサラ・コナーにフォーカスしている。
ジェームズ・キャメロンのターミネーターはやはりサラ・コナーの物語だったんですよね。




<そのほか>
その他のシリーズ作とジェームズ・キャメロンのターミネーターでぜんぜん違うのがキャラ立ちだと思うんです。その他の作品のキャラが弱いのに比べてもう圧倒的にキャラが立っている。主人公だけじゃなく主要なキャラぜんぶ。これってアイデアや脚本が巧いのもあるけど、やはり描くテーマの力強さとそのテーマに強く関連した必然性を与えられてるからだと思うな。

ジェームス・キャメロンは自分が関与しなかった「ターミネーター3」「Salvation」「ジェニシス」を無かったことにしたって言われてるけど、これってそれらの作品がパラレルで存在することを否定してないと思った。ジェームス・キャメロンは「それぞれの世界線はあり得る」っていうのをギリギリ許容するストーリーにしていると思ったな。

シュワルツェネッガーが御年72歳そのままの姿で登場するのは色々事情があろうけど、設定的には「このT-800が潜入型だったから」で説明できると思った。「場合によっては何十年も人間社会に潜り込んで任務遂行を果たすことを想定してこのT-800は加齢を装うように設計されてんだな」って解釈したよ。ジェームス・キャメロンはそう言ってないらしいけどね。
5 10

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