【質問】
>こないだ事情聴取したが、日本にも交渉チャンネルになりそうな人物も居るし、イスラム国に行きたいというやつもいた。ご本尊を内々に交渉チャンネルを立てて
>「イスラム国に行きたい奴、直接じゃないけど出国させたよ」とでも言えば、とりあえず人命は保全される。
>
http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1323.html
という意見があります.
常岡浩介や中田考ら(文中敬称略,以下同)のことを指していると思われますが,彼らを交渉役として起用すべきだったのでは?
【回答】
それについては賛否両論がある.
たとえば手嶋龍一は,おおよそ次のように述べる.
「ダーイシュ支配下の地域にも行くことができるという点で貴重な人材なのだから,彼らを同地域に渡らせることにより,たとえ交渉成功まで行かなくとも,ダーイシュについての情報を,彼らを通じて得ることができるだろう」と.
詳しくは,
https://www.youtube.com/watch?v=xlJKZXn58Wo
を参照されたし.
一方,宮家邦彦は否定的である.
彼によれば,交渉とは水面下で行われるものであるので,中田が記者会見で公に「交渉役を買って出る」ことを広言した時点で,既に欠格であるという.
これについては手嶋も認めており,上記の手嶋自身の主張についても,「マスコミに有名になってしまう前に起用すべきだった」と,留保条件を付けている.
(ただ,両名は北大生事件渡航未遂の時点で,既に有名になってしまっているので,その留保条件を考慮するなら,事実上,「交渉に起用すべきではない」ということになってしまうのだが)
詳しくは上記動画を参照されたし.
佐藤優に至っては,「中田考はダーイシュのPR担当」だとして,中田の姿勢自体に否定的である.
彼は次のように述べている.
「彼[中田]がまずやらなければいけないのは,北大生事件に関する説明です.
『どういうお考えで学生をイスラム国に斡旋しようとしたのか』
と聞きたい.
また彼は(04年にイラクで殺害された)香田証生さんの事件で
『シャリーア(イスラーム法)上,民間人でも成人男子なら戦闘員と見做されて処刑されても合法』
と主張していた.
昨年7月号の『文學界』では,
『カリフ制の最高のためにジハードに身を投じて殉教するべく,持ち家を処分』
したとまで書いている.
彼はイスラム国の宣伝をやっているわけです」
(週刊新潮 2015.2.5号,p.32)
常岡にしても,
https://www.youtube.com/watch?v=L8NQkn-rPZQ
において,ダーイシュ支配下地域での取材に際し,
「チェチェン人司令官に身分保証してもらった」
と話しており,そのチェチェン人部隊はダーイシュに参加している義勇兵部隊である.
つまり,「あちら側」の人間なのであって中立でも何でもない.
さらに,仮に情報を得るためだけに送り出したとしても,彼らから得られる「情報」にはバイアスがかかっている可能性が高く,果たして「使える情報」が得られるかどうかは疑問である.
バイアスがかかった人間というものは例えば,
北韓に渡っても,これを「地上の楽園」呼ばわりしたり,
ポルポト政権下のカンボジアに渡っても,虐殺を感知するどころか,逆に「アジア的優しさに満ちている」などと表現したりする.
そうした知見が,何かの役に立つのかは大いに疑問である.
さらにまた,日本側の何らかの情報が向こうに知られるリスクもある.
彼らが日本側の情報をダーイシュに流さない可能性は,非常に低いと考えられる.
常岡などは,「取材源の秘匿」をタテに,向こうの情報は日本側に流さない可能性もある.
https://www.youtube.com/watch?v=L8NQkn-rPZQ
その場合,日本側は情報を取られっぱなしで何も得るものはない.
私見を述べさせてもらうなら,以上から総合的に判断するに,常岡や中田を交渉役に起用することは,得策とは思えないのだが…
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