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2020年06月29日00:03

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エピソードEX5(リレー)その27

マイミクの綾華☆☆様のコミュニティにおけるリレーエピソード『から騒ぎの感謝祭』に更新がありましたのでお知らせいたします。

なお綾華☆☆様のコミュは下記のアドレスです。シリーズ本編をご覧になられる場合はこちらへお回り下さい。参加は綾華☆☆様の承認制ですが、申請はどうぞお気軽に。

「ZERO Another BALLAD」
http://mixi.jp/view_community.pl?id=5150160&_from=subscribed_bbs_feed


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EXリレーエピソード『から騒ぎの感謝祭』
MF

takeー27

February 12 PM 00:30

「見ものだね南雲君」
「ええ、そうですね」
 夢野市庁舎18階の市長室にて、TV画面中で対峙する両雄を見守る市長と筆頭秘書。確かに画面越しでさえも、互いに相手を見据える視線の厳しさには固唾をのませるものがある。
「どちらが勝つとお思いですか」
「予想がつくような勝負など面白くはないだろう?」
「確かに。それより」
 筆頭秘書の苦笑いが真顔に戻る。
「あちらはいかがいたします?」
 画面から離れた異星人たちの視線が、大通りの向かい側にある喫茶店の内部を見通す。店内のTVにも同じ試合会場が映し出されているが、満席どころか立ち見さえ出ている客のみならず店を営む老夫婦も含め、そんなものを誰ひとり見てはおらず、全員が表情の抜け落ちた白コートの女を中心にうなだれている。
「いずれ動き出すと思われますが」
「いかがも何も、一介の市長や秘書の身でどうにもできはしないだろう? なに、選手諸君は怪獣退治の専門家だ。試合が済めばそちらでも面白い勝負を見せてくれるのではないかね」
「それも含めて見ものというわけですか」
 筆頭秘書の顔に再び苦笑が浮かぶ。


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「ねえあれ、B・i・R・Dの隊員じゃない?」
 メースの声に足を止め、電気屋のショーウィンドウに置かれた大型TVを見物人たちの背後から覗き込むポンポス星人たち。
「うむ、確かに見覚えのある顔である」
「何度も作戦を邪魔した憎っくき奴だ」
「刀で脅されたこともありましたよね」
「だったらコテンパンに負けちゃえ!」
 メースの言葉にそうだそうだと相づちを打つオースとドース、だが!
「愚か者どもめぇえーーーーっ!」

 ボースの大喝に3人はいうに及ばず見物人や通行人たちまでも驚愕の面持ちで振り向くが、そんなことなど目もくれず侵略者の首魁は部下たちをじろりと睨むやおもむろに口を開く。
「さあおまえたちいってみろ、ワシらの侵略目的とは何ぞ!」
「はい、B・i・R・Dジャパン隊員食堂奪取でありまっす」
 大真面目な当事者4人ではあったが、この段階で周囲の人々が話についていけなくなったのも無理からぬことだった。なにしろ人々は知らなかったのだ。銀河を越え地球へ飛来した彼ら侵略の尖兵の黒星で埋め尽くされた戦績と敵地で強いられた極貧生活の結果、その戦略目標が後退に次ぐ後退のあげくひたすら矮小化の一途を辿った経緯など。
「ならばそのため、ワシらはなにをせねばならんのだあっ」
「はい、アニキ様を隊長にお就けすることでありまっす!」
 一様に互いの当惑顔を見合わせる見物人たちだったが、答えを得るすべはもちろんなかった。よもや具なしカレーとパンの耳という宇宙食もかくやというような単調な食生活に明け暮れていた彼らがB・i・R・Dの留置場でタカフミから差し入れられた定食やうどんの美味さに尋常ならざる衝撃を受け、以来アニキ様と慕うタカフミを隊長に据えさえすればこんなメシが365日3度食えると思い込んだなどとは想像もつかなかったのだから。
「では考えてもみろ。アニキ様の側のチームが勝てずして、なぜアニキ様が隊長になれるというのだあっ」
「た、たしかに仰せのとおりっ」「あたしたちが浅はかでした」「お導き下さいボース様!」
 縋らんばかりの部下たちに、ついに作戦立案および遂行の責任者は指令を下す!
「ならばワシらが成すべきはただ一つ、ここは全力でアニキ様のチームを応援するのだぁあっ」
 せ〜のと応援を始めようとした4人の動作が、だが突如として止まる。
「B・i・R・Dのあの選手、名前ってなんだっけ?」「あたし覚えてない」「俺もだ」「ワシに訊くなっ」
 ああ、彼らのなけなしの脳細胞には、最初の侵略戦でB・i・R・Dに惨敗を喫した際、逃げようとした自分たちを本気も本気の殺す気満々でレーザービームからホーミングミサイルにわたる全弾をぶっぱなしつつ追い立てた悪魔のごとき真柴リーダーと、尋問に疲れきった際にカツ丼ならぬ各種定食を差し入れてくれた地獄に仏のタカフミの名の両極端しか刻まれていないのだ。首をひねりつつ唸るばかりの4人だったが、ついにドースが手をポンと叩いて曰く、
「あの若造、たしかアニキ様に敬語で話していましたよ。きっとアニキ様の手下というか、家来ですよ家来!」
 おおっとどよめく一同! そんな自分たちに見物人たちはドン引きしているが、無論そんなことなど誰ひとり気づかない。
「では全員で応援するぞっ、頑張れアニキ様の〜ぉ」
 唱和しかけたそのとたん、偵察から駆け戻ったミースが告げる衝撃の報告!
「あっちのミニスーパーの前で焼き芋の試供品配ってます。タダですよタダ!」
 瞬間、それまでのことなど頭から消し飛んだ一同は全力で走り去ったのだった。


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