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2010年03月13日21:20

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イコライザーとしてのラウドネス

クラシック音楽を録音で聴く場合、演奏会でのイメージに近い再生を目標にすることが多いと思いますが、苦労させられるのがマスタリング以降のプロセスで付加されるとおぼしいレーベルごとの音色の癖の除去です。機材にコストをかけられないマイナーレーベルが簡素なシステムゆえに意外とヴィヴィッドな音を聴かせてくれるのに対し、メジャーレーベルは機材の構成が大規模になりやすいせいか、ともすればメタリックなつやのようなものがつきまといがちです。僕の場合メインシステムではCDプレーヤーとアンプの間にグラフィックイコライザーを挟み込んで対処しています。この方法は補正した音をMDやCD−Rに保存することができるのですが、単品でのグラフィックイコライザー、それも左右両チャンネルを連動してコントロールできるタイプのものは市場から姿を消してしまったので、もはや実現は困難です。

もう一つの方法はサブシステムで使っているヤマハのプリメインアンプの独自機能によるものです。ヤマハのプリメインには昔からトーンコントロールとは別にラウドネスコントロールが付いているのですが、これが連続可変型なのがミソです。ご存知のことと思いますが、本来ラウドネスコントロールとは再生音量が小さくなると中音に比べ低音や高音、特に低音が聞き取りにくくなる現象を考慮して、小さい音量にしたときに音域のバランスが崩れないようにする機能です。ほとんどは中音に対して低音と高音をそれぞれ強めるタイプのものですが、これは増強特性のカーブが固定なので厳密にいえば特定の音量にしかマッチしないことになります。ヤマハが自社製品に搭載しているものは人間の耳の特性とちょうど逆になるよう、コントローラーを絞ると低音や高音を残して中高音が優先的に減衰していくタイプのもので、通常音量でちょうどよく聞こえているときの位置にメインボリュームを保ち、ラウドネスコントローラーで音量を下げるという使い方を想定しています。

この減衰特性のカーブは中高域が谷底になって低域に大きく高域に小さく盛り上がる通常のトーンコントロールでは作れない形になりますが、これこそメタリックな音色をキャンセルするための理想的な周波数カーブであり、しかもそれが浅くも深くもできる点が実に好都合です。残念ながらヤマハのローコストプリメインの音色自体はクラシックにはやや明るすぎるものなのですが、これは組み合わせるCDプレーヤーやスピーカーを重厚なタイプにすればなんとかなります。CDプレーヤーではデノンのDCD−755がよくマッチしますし、このモデルは今や数少ないピッチコントロール機能を持っている点でも古い録音の復刻盤を聴く機会の多いクラシックファンにはお薦めです。

最近我が家では、SACDプレーヤーを繋いだメインシステムを優秀録音に、サブシステムをDGや東芝EMI、コロムビアやクラウン、シャンドスやナクソス等のメタリックになりやすいレーベルの再生に振り分けるようにしていますが、たとえばカラヤンや小澤、アバドなどDGにレパートリーの中心が置かれていたような演奏家の場合、しばしばいわれていた表現が浅いとの悪評のいくらかは音質のせいでもあったのだろうと思うほど印象が変わります。初めから高音質が期待できないヒストリカル音源と異なり新しい録音は聞こえたままの印象で評価されてしまいがちですが、録音されることが前提ではなかったクラシックのような音楽を聴き込んでいく以上、再生音質に由来する演奏の印象の問題についてはより注意深くありたいものです。

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