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2017年12月23日23:03

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第4061話  みぞれと天使

どうも、ともんじょです。

今年もクリスマス企画をいきますよ。
ありもしないクリスマスのエピソードです。

冷たく降る雨の中、乾いた破裂音が街にこだまする。
はしゃぎまわるバカが鳴らしたクラッカーの音ではない、銃声だ。
なぜそんなのがわかるかって?
それはオレが撃ったからだ。けど、撃ったのは3発程度、その後に銃を撃ったのはあいつの手下どもだ。
オレは対立するやくざの親分を撃った。奴はオレらのシマを荒らしたからだ。
現代でもまがりなりにも任侠道は残っている、その道を外すようなことはあってはならない。
掟を破るものにはそれ相応の責任と対価を払ってもらわないといけないわけだ。
ただシマを荒らしただけじゃない、オレらの組の若いもんを痛めつけちまった。
若いもんは「トウマ」って名前だ。
トウマは組を抜けるつもりでいた、オレはそれに協力した、というよりもオレがトウマに組を抜けてまっとうに生きるように諭したんだ。
知ってる刑事さんに組を抜ける手続きを頼み、頭もそれに了承した。
手続きを終え警察署からの帰りに奴らに襲われた。こいつはついていなかった。
襲った奴らはそんなこと知っているわけもなく、トウマを見つけると徹底的に痛めつけ、ボロボロになったトウマを組事務所の前に捨てて逃げていった。
トウマは今も病院で目を覚まさないでいる。
手打ちの鉄砲玉になることをオレが頭に志願した、頭はそれを受けれてくれた。
組にあるただ一つだけのチャカを頭は持たせてくれた。
つてを使って奴の今日の行動を知ることに成功した。
クリスマスイブなので今日はなじみの店でどんちゃん騒ぎをするらしい。
一歩路地に入れば人気の無くなるへんぴな街だ、オレは物陰に隠れて奴が出てくるのを待っていた、待っているうちに雨が降り出す、やたらと冷たい雨だった。
何時間も待ってついに奴が出てくる。
オレは奴の名前を叫び名が飛び出す、突然現れたオレに驚きビクついた隙に奴のどてっぱらに銃弾を撃ち込んだ。そこまでは良かったが、手下の対応は意外と速く奴らも銃を抜きオレに向かって撃ち返してきた。オレは人生で初めて全速力で走った、奴らよりこの街のことはよく知っているので簡単に巻くことはできたが、気が抜けた瞬間、体のあちこちからアツアツの火箸を押しつけられたような痛みが走り。耐えられなくなったオレはその場に倒れ込んだ。
街灯の光が当たるところから体を引きずり、薄暗いコンクリートブロックの壁にもたれかかる。
疲れか痛みかよくわからなかった。けど、逃げているうちに雨はみぞれに変わり、倒れ込み火照った体に舞い落ちるみぞれの冷たさは心地よかった。
何分くらい壁にもたれかかっていただろうか、ふと気がつくと伸ばした足の先に人のつま先が見えた。
重くなってきた頭を上げると人が立っていた。真っ白なマントが薄闇に映えるフードをかぶっているのか顔までは見えない。
真っ白い人はオレに話しかける「何か欲しいものはあるか?」
「たばこ」と答えたかった。けど、声が出なかった。
「何か欲しいものは?」またオレに尋ねる。
「あの日にもらい損ねたプレゼントを」オレは出しにくくなった声を振り絞った。
するとマントの隙間から手が伸びると冷えきった手がオレの額に触れた。

クリスマスの夜明け前に母親はオレを家から連れ出した。
とるものもとりあえず寝ぼけ眼でオレは親父の車に母親と乗せられた。
サンタに会いたかったオレは眠らないように、寝るふりをしてサンタが来るのを待っていた。
ところが、夜中に部屋にやってきたのは父親だった。
眠るふりをするオレの枕もとに父親は包装された箱を置いていった。
朝起きたら速攻でおかれたものが何なのか開けてやろうと楽しみにしながら眠りについた。
しかし、オレはプレゼント中身を知ることなく母親に連れられ、親父のもとへ連れていかれたのだ。
親父は母親の不倫相手だった、父親に隠れて親父との不倫関係を堪能していたらしい。
父親は堅実な人だった、真面目に仕事に出かけ、休みの日には遊んでくれた。
そんな父親のことを「ツマらない男だ」と母親は言っていた。
不倫相手の親父の方が粗暴ではあるが、金があり、わがままを聞いてくれるイイ男なんだそうだ。
オレには親父は粗暴で厚顔無恥の最低な野郎としか思えなかった。
そのせいか親父との関係はずっと険悪なまま続き、いい関係を築くことなく、オレは中学を卒業すると家を飛び出し、こうしてヤクザになり下がった。

カチャリ、と部屋のドアが開く音がした。息を殺してオレの眠るベッドに近づく気配がする。
サンタクロースが今年もやってきた。ニヤけるのを我慢して薄く眼を開けて、寝返りを打つ。
闇に目が慣れていたのか、暗い中に浮かぶ人物が父親そのものだった。
そうか、とうさんがサンタクロースだったんだ。オレは納得した。嬉しかった。
抜き足差し足で部屋から出ていく父親。カチャリと音だしドアが閉まる。
目をパッと開き布団から飛び出す。
枕ものとには包装された箱がある。丁寧に包装紙を外す。
とうさんはオレに何をくれるのか。
キレイに包装紙を外すとプレゼントが見えた。
モデルガンだ。このモデルガン知ってる。
ジョンソン警部の銃だ。とうさんは映画が好きでよくビデオを借りてきた。
オレは父と一緒に見るのが楽しみで仕方がなかった。
そんな中でもオレもとうさんも大好きだったのが「ジョンソン警部シリーズ」だ。
アメリカのド派手なアクションで、毎回ジョンソン警部はハンドガン一丁で凶悪な犯罪者やテロリストに戦いを挑んでいた。
そんなジョンソン警部にあこがれオレは銀玉鉄砲を持って父さんテロリストに戦いを挑んだものだった。
銀玉鉄砲とは似ても似つかぬデザイン。これはかっこいい。朝になったら早速とうさん凶悪犯を逮捕しないといけなくなった。モデルガンを箱に戻して包装紙も戻す。
布団に入りこんで眠りにつく。
寝付いた途端に母親に叩き起こされる。
「ほら、早く早く」
強引にオレをベッドから立たせると、手を引っ張り部屋から出ようとする。
枕もとにはモデルガンが残されている、このままじゃまた父さんのプレゼントを手放すことになる。
母親の手を振りほどきモデルガンを取りに行く。
包装紙を破り捨て箱も乱暴に開けて、ジョンソン警部をしっかりと握り連れ出す。
強引にオレを引っ張る母親に「ちょっとおかあさん痛いよ」と声を出す。とうさんに気付いて欲しかった。けど、直接とうさんを呼ぶことができなかった。
住んでいるマンションの入り口に親父の運転する悪趣味な外車が止まって母親のことを待っていた。
母親は強引にオレを後部座席に押し込めると自分は助手席に乗った。
「おい、ガキも一緒とは聞いてないぞ」と舌打ちをして母親に抗議し、後部座席のオレに振り返ると。「ガキ、てめぇシート汚してみろよ、承知しないからな」と凄む。
またこいつと一緒にならなければいけないのか、オレは絶望する。
けど、右手にはジョンソン警部のモデルガンがしっかりと握られていた。
この銃がオレを守ってくれるはずだ、オレは銃を構える。ジョンソン警部と同じように左手を添えて眉を寄せながら小首をかしげる。親指で撃鉄を下げる、一発だけ打つ時はジョンソン警部はこうしていた。
照準の先は親父の後頭部だ。
ふとバックミラー越しに銃を構えるオレの姿を見たのか親父が激昂し振り返る。
「てめえ何してやがる」鬼のような顔をしてオレを怒鳴る。
引き金を引いた。

銃声

額に当てられた手はいつの間にか外れていた。
真っ白い人もいなくなっていた。夢だったようだ。
体を起こそうにも力が入らない、そして、痛い、全身熱いのに右手だけがひんやりしている。
まだ、チャカを握っていた。忌まわしいったらない。ジョンソン警部みたいにカッコよく悪い奴をやっつけることはできなかった。
どうやったら、あんなに撃たれて傷一つつかないのか。
手が硬直しているのかチャカが手からはがれない。力み過ぎている。
左手で固まった指を外そうとした。目の前にチャカを持っていくと気がついた。
このチャカ、ジョンソン警部の銃と同じ銃だ。
なんで気付かなかったのか、気づくわけがないあの映画は何年も見ていない。あの夢を見ていない限り銃の種類なんて気付きようがない。
あの夢みたいにあそこで親父を撃っていたらどうなっていただろう。
こんな風に惨めったらしくみぞれに濡れて撃たれて瀕死になることなんてなかったかもしれない。
あの時のプレゼントの中がわかっていたらこんなことになっていなかった。
あの時とうさんを呼んで助けを求めていたらこんなことにならなかった。
あのクリスマスの夜がなかったら。
ジョンソン警部、助けてくれ。もう嫌だ、こんなの嫌だ。
オレはあんたみたいになりたかったのに、これじゃああんたに倒される悪党じゃないか。
そうか、だからあんたは今ここにいるわけだ。オレを倒すためにオレの右手にいるってことか。
オレは銃を構え、眉を寄せ、小首をかしげて。

引き金を引いた。

オレっていう悪党はいなくなった。
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