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2020年03月29日06:20

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三葉虫は見た(岩石15)

 普通に見かける虫を含む節足動物は、動物界の1グループ(門)である。外骨格を持ち、脱皮する小型の生物だ。動物種の85%を占めるといわれる。本門は4つのグループ(亜門)に分けられる。セミなどの昆虫類・エビなどの甲殻類・クモなどの鋏角(きょうかく)類・ムカデなどの多足類である。

 かつて、もうひとつ別のグループが存在した。三葉虫(さんようちゅう)類である。カンブリア紀からペルム紀に至る古生代(約5億4200万〜約2億5100万年前)の約3億年を生き抜いた。示準化石になっており、三葉虫が含まれることで地層の時代がわかる。筆者もいくつか持っている(写真)。

 古生代以降を顕生(けんせい)代という。「目に見えるサイズの生物が存在する」時代という意味である。最初のカンブリア紀に、多様な化石が一斉に現れる。これを「カンブリア爆発」という。化石になるのは、硬い殻を持つ生物である。その代表例といえるのが、三葉虫である。

 写真からわかるように、三葉虫は縦方向に頭部・胸部・尾部と分かれている。これが、名称の由来である。また、各部分は体節構造からなっている。体節下部には足があったが、上部に比べ柔らかく外敵に弱い。捕食者に襲われた場合、ダンゴムシのように丸まって防御した。丸まった状態の化石も発見されている。

 三葉虫の生活はどうだったのだろう。海底をはい回ったり、泥中に潜る腐食者だった。一部には遊泳するタイプや捕食者もいたようである。通常サイズは数cm程度だったとされる。ただし、幅は広い。成体でも1cmに満たないものから60cmに達するものまで存在した。

 注目すべきは、左右の複眼と数個の単眼を備えていたことである。同時期に著名な捕食者が存在した。巧みに遊泳し、獲物を襲ったアノマロカリスである。側面を齧られた傷跡のある三葉虫の化石が発見されている。三葉虫の眼は捕食者を捉え、襲撃回避に役立っただろう。

 カンブリア爆発をどう解釈するか、科学者は古くから悩んできた。進化論を提唱したチャールズ・ダーウィンがそのひとりだった。進化はゆっくり進んだと考えていたので、爆発状態を説明できなかった。近年、この謎に取り組んだのが、世界的ベストセラー「ワンダフルライフ」1)を著わした故スティーヴン・J・グールド氏である。

 氏は「断続平衡説」を提唱した。ある時期、進化は爆発的に進み、その後停滞するという。その後、各種研究が進み、本説は誤りとされるようになった。生物の大型化と多様化はカンブリア紀以前に進行していた。それでも、柔らかい身体のため、化石になり難かったのである。

 カンブリア紀の化石増大は、多くの生物が硬い殻を持つようになったためである。捕食と被食の争いの中で、どちらも硬い殻を持つ生物が増加した。争いを加速させたのが、眼の出現である。これらが、リチャード・フォーティ氏「三葉虫の謎」2)に記されている。副題が「『進化の目撃者』の驚くべき生態」である。
1) スティーヴン・J・グールド「ワンダフルライフ」早川書房(1993)
2) リチャード・フォーティ「三葉虫の謎」早川書房(2002)

*FOOCOM.NET:筆者の記事「酵素サプリメントに気をつけて」が掲載されました。
 http://www.foocom.net/column/contrib/18456/
*業務関連:ホームページを開設しました。
 https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/
*中国ひとり歩記:連載中です。
 https://www.foodwatch.jp/category/strategy/walkinginchina/

*訂正
 三葉虫の由来は横方向で、中央部と両側面になる。縦方向は筆者の勘違いで、申訳なくご容赦いただきたい。


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