古戦場めぐり「丁未の乱・守屋追討の戦い（大阪府八尾市）」

古戦場めぐり「丁未の乱・守屋追討の戦い（大阪府八尾市）」

◎『丁未の乱・守屋追討の戦い』
「丁未の乱」（ていびのらん）は、飛鳥時代に起きた内乱です。丁未の変、丁未の役、物部守屋の変ともいいます。仏教の礼拝を巡って、崇仏派の大臣・蘇我馬子と対立した排仏派の大連・物部守屋が乱を起こして、滅ぼされました。
用明天皇2年(587) 7月、蘇我馬子は遂に群臣と謀り、物部守屋追討軍の派遣を決定しました。蘇我馬子は、厩戸皇子(聖徳太子)、泊瀬部(はつせべ)皇子、竹田皇子、難波皇子、春日皇子などの皇族や、紀男麻呂(きのおまろ)、巨勢臣比良夫(こせのおみひらぶ)、膳臣賀陀夫(かしわでのおみかたぶ)、葛城臣烏那羅(かつらぎのおみおなら)らの諸豪族の軍兵を率いて、一方、大伴連囓 (くい)、阿倍臣人、平群臣神手(かむて)、坂本臣糠手(あらて)、春日臣などは、別道隊として志紀郡から、河内国渋川郡の守屋の館(八尾市太子堂)へ進軍しました。こうして見ると、当時の皇族や豪族のほとんどが、蘇我馬子側に荷担したことがわかります。
大和国から河内国へ入った蘇我陣営の軍は、餌香川の河原で物部軍と交戦し、戦後の河内国司の言によれば、双方合わせての戦死者は数百に上ったといいます。守屋は一族を集めて、自ら子弟と奴の兵士たちを率い、稲城を築き、守りを固めよく戦いました。その軍は強盛で、守屋は、衣摺(きぬずり)の地にあった榎木に登って、樹上から雨のように矢を射かけました。守屋の軍は、士気が盛んで果敢に戦ったため、討伐軍は恐れをなして三度退却しました。これを見た厩戸皇子(聖徳太子)は、戦闘の様子を観察しながら、仏法の加護を得ようと白膠木(ヌリデの木)を切り、急いで四天王の像をつくり、束髪の上にのせ、「敵に勝つことができたら四天王のために寺塔を建てよう」と誓いました。馬子も同じように、「仏の加護でこの戦いに勝つことができたら、寺塔を建てて三宝を広げよう」と誓いました。馬子は、軍を立て直して進軍させました。
討伐軍の中に、迹見赤檮 (とみのいちい)という剛の者がいました。彦人大兄皇子の舎人だったとされています。彦人大兄皇子は、参戦しませんでしたが、代わりに弓矢が得意な舎人を派遣していました。この迹見赤檮が、榎木に登って矢を射かける守屋を射落として、その首をはねました。これによって、守屋軍はたちまち崩壊し、守屋の一族らを殺し、守屋の軍は敗北して離散しました。守屋の一族は葦原に逃げ込んで、ある者は名を代え、ある者は行方知れずとなりました。戦後の論功行賞で、迹見赤檮は一万代の田（一代は百畝）を賜ったといいます。また、厩戸皇子(聖徳太子)は、摂津国に四天王寺を建立しました。物部氏の領地と奴隷は両分され、半分は馬子のものになりました。馬子の妻が守屋の妹であるので、物部氏の相続権があると主張したためです。また、半分は四天王寺へ寄進されました。

○「大聖勝軍寺」(八尾市太子堂3-3)
「大聖勝軍寺」（だいせいしょうぐんじ）は、八尾市の旧奈良街道に面して建つ高野山真言宗の仏教寺院です。山号は神妙椋樹山。開基は聖徳太子、本尊は植髪太子（聖徳太子）です。寺伝では、聖徳太子が、渋川の阿刀の館にいた物部守屋を滅ぼすにあたって、信貴山の毘沙門天に祈願し、四天王を祀ってその加護により守屋を討って、戦勝を得ることができたので、難波の高台に日本仏教最初の四天王寺を建立し、この渋川に勝軍寺を創建して、自身16歳の植髪（うえがみ）の太子像と四天王像を安置したといいます。聖徳太子建立三太子の一つで、太子町の叡福寺の「上の太子」、野中寺の「中の太子」に対して、「下の太子」と呼ばれています。地元では単に「太子堂」と呼ばれています。本堂の太子殿には、太子植髪像を安置し、その脇に弓矢を持つ四天王像を祀っています。これは4人の関係者をおのおの四天王になぞらえたもので、右から持国天（蘇我馬子）、多聞天（秦川勝）、広目天（迹見赤檮）、増長天（小野妹子）の四体となっています。
大聖勝軍寺は、『日本書紀』に示されない伝説が伝わっています。物部討伐軍に参戦した聖徳太子が、物部軍に追われたとき、椋（むく）の木が二つに割れて皇子の身をかくまったというのです。その椋の木が境内に祀られています。推古天皇は、椋樹と大聖聖徳法王の勝ち軍を讃え、神妙椋樹山大聖勝軍寺という山号と寺名を賜ったといいます。
【守屋池】
大聖勝軍寺の境内には、門前に秦河勝が物部守屋の首を洗ったと伝わる「守屋池（守屋首洗池）」や馬蹄石があります。
【物部守屋の墓】
大聖勝軍寺の付近には、鏑矢塚、弓代塚、それに物部守屋の墓があります。物部守屋の墓は、寺を出てすぐの国道沿いにありますが、案内板や解説もなく、分かりづらいです。逆賊ってことで、扱いが悪いようです。