横浜市磯子区さんぽ「洋光台西公園から金沢道(鎌倉道、保土ヶ谷道)」
◎『金沢道(鎌倉道、保土ヶ谷道)』
「金沢道」(かなさわ道)は、東海道五十三次程ヶ谷宿（現保土ヶ谷駅）の金沢横町から金沢の六浦陣屋（現金沢八景駅）へ到る道です。金沢からは朝比奈切通しを経て鎌倉へ通じるため、「金沢鎌倉道」とも呼ばれています。平安時代以前の東海道は、鎌倉から金沢・六浦を経て三浦半島から房総半島へ渡っていました。鎌倉時代に入って鎌倉街道が整備され、鎌倉から房総半島へ到る道は「鎌倉道下ノ道」と呼ばれるようになり、その途中の金沢から北上し程ヶ谷へ到る「かなさわ道」が開かれました。経路は、保土ケ谷〜いわな坂〜岩井〜清水ヶ丘公園〜蒔田〜弘明寺〜上大岡〜打越〜栗木〜能見台〜金沢文庫・称名寺〜町屋〜瀬戸神社〜金沢八景です。その先は、鎌倉道(朝比奈切通し経由で鎌倉へ、六浦道とも)、浦賀道(横須賀経由で浦賀へ)になります
○「洋行台共同墓地の庚申塔」(洋行台5-15)
JR洋光台駅を出て根岸線沿いに、こども宇宙科学館裏手を西に向かい右折すると、50ｍ先の横断歩道の左脇が共同墓地になっています。共同墓地入口に、延宝8年(1681)銘の尖塔型庚申塔のほか、青面金剛2基、石祠、歌碑があり、隣の敷地には軍茶利明王の小社があります。
○「洋光台西公園」(洋光台2-2)
北に向かうと「洋光台西公園」があります。高台からの展望は素晴らしく、富士山や箱根の山が望めます。時期が限られますが、この公園の梅は地域の愛護会の方が植樹、お世話をされていることもあってとても綺麗です。
○「薬王寺(来迎寺跡)」(洋光台3-12)
洋光台西公園から北東に向かうと、廃寺となった来光寺跡に「薬王寺」があります。山門を入ると正面に薬王寺、右手に観音堂が建っています。もともとは来迎寺と金山寺という2つの寺が前身とされ、来迎寺は覚梵という僧により鎌倉時代の後期頃に開山されたと伝えられ、金山寺の開山については不明とされています。どちらの寺も、明治初年の廃仏毀釈によって廃寺となりました。来光寺の本尊は、もともと金山寺の本尊であった聖観音菩薩で「矢部野観音」と呼ばれていました。山門入口には六地蔵と馬頭観音碑があり、よく手入れされた庭が来訪者を和ませてくれます。
【薬王寺の庚申塔】
境内に、万延元年(1860)と延宝3年(1675)銘の庚申塔があります。
○「金山神社」(洋光台3-35)
さらに北東に向かうと、洋光台第一小学校の東方に「金山神社」があります。もとは、矢部野という集落の鎮守でした。根岸線洋光台駅は、当初「矢部野駅」を駅名とする案もありましたが、今の新しい町名の駅になりました。神社の前の道は、矢部野の山の中を経て峰白山神社を通り鎌倉に向かう道で、昔は鎌倉の裏街道だったようです。開創は不明ですが、ご祭神が鉱山や鍛冶の神である金山比古神なので、鎌倉時代ではないかと伝えられています。明治初年、神仏分離になった際、この社の別当寺であった泉蔵院と分離して、社名を金山神社に改めたといわれています。境内の一番高い所に木造の社殿があり、社殿を囲むように生い茂る数本の大木がこの社の歴史を物語っています。
○「若宮八幡宮の庚申塔」(洋光台1-13)
金山神社のさらに北東、洋光台入口バス停の南に「若宮八幡宮」があります。境内に、元禄14年(1701)、天保9年(1838)銘の庚申塔があります。
○「田中神社」(田中2-6)
若宮八幡宮から南に向かうと、高台に「田中神社」があります。昔は御嶽社といい、今は田中の町の鎮守様となっています。『新編風土記』によると、御嶽社は田中村の南にあり、「江戸時代からおみたけさんと村の人々から親しまれていた」と記されています。
○「栗木神社」(栗木2-13)
田中神社からさらに南に向かうと、高台に「栗木神社」があります。もともとは山王信仰の神道、比叡山麓の日吉大社より勧請を受けた神社である日枝神社を名乗っていたようですが、創建については明確な由緒書きが残っていないようです。しかしこの地は、古来武蔵の国の久良岐郡のほぼ中心に位置し、鎌倉時代から室町時代にかけて鎌倉防衛の要地でもあり、山岳信仰の修験が祀られた社であることから、創建は室町時代ではないかといわれています。ちなみに、栗木の「クリ」は久良岐郡の「クラ」の名の源という説もあります。祭神は国常立尊(くにとこたちのみこと)。創建については不明のようで、江戸時代以前から栗木村の鎮守の社として村人に崇められていたようです。他に、占いの神様といわれる櫛真知命(くしまちのみこと)の御岳神社、馬の守り神、駒形神の駒形神社が合祀されています。明治45年には近隣の六ヶ村（谷部野、田中、栗木、上中里、峰、氷取沢）の各神社が栗木に合祀され、上笹下神社として祭事が行われていたようです。境内に名木マテバシイがあります。
○「金台寺」(栗木2-36)
栗木神社から東に向かうと「金台寺」があります。開創したのは、栗木が幕府の御料（直轄地）に任ぜられた翌年の元禄10年（1697）正月で、開山は貞享2年（1685）円海山阿弥陀寺の第四世・實道和尚です。『新編武蔵風土記』によると、「金臺（台）寺、年貢地（直轄地）、村ノ南ニアリ、稲荷山ト号ス。本尊阿弥陀ヲ安ズ」と記されています。寺宝は、ご本尊の阿弥陀如来立像（高さ約45�僉法⊇衆賁夢儔餐�（高さ約39�僉法⇔沼膸嫣�（高さ約24�僉砲任后６�内に、地蔵と共に庚申塔が数基あります。
○「上中里神社」(上中里町441)
金台寺から南に環状3号線の栗木交差点へ。栗木交差点から笹下釜利谷道路を南に向かい、上中里町バス停を右折して磯子高校方面に進むと、正面に小高い丘にこんもりと茂った森の上に「上中里神社」が見えてきます。長くて急な階段を上ったところに本殿があり、今から1240年ほど昔、聖武天皇の時代、東大寺や国分寺建立の実質的な責任者と伝えられる行基菩薩がこの地に滞在した時、人々のために天下泰平、請願満足の祈願をして不動明王像を彫刻しました。それを祀って、このあたりの村の鎮守としたのが始まりとされています。その後、寛永年間(1624〜45年)にこの地で山火事があり神社は消失し、不動明王像も行方不明になっていましたが、その後、近くの水田の中で夜になるとほのかな光を放つ場所があり、そこから不動明王像を発見しました。堂を再建して、改めて村の氏神として祀ったと伝えられています。
【間宮寺跡】
神社のある小高い森のあたりを不動山と呼び、不動山の山麓(階段下)には「間宮寺」(けんぐうじ)というお寺が別当寺として創建されましたが、明治の神仏分離令により廃寺となり不動堂だけが残りました。現在、手洗い場の奥に不動明王の碑があり、石塔には「南無妙法蓮華経」と「不動山間宮寺」の文字があります。
○「随緑寺」(上中里町730)
バス道路をさらに南に向かい、上中里交差点の先の随緑寺入口バス停を右に入って行くと「随緑寺」があります。随縁とは、仏教用語で「縁に従う」という意味だそうで、真理は絶対不変でも縁に応じてさまざまな現れ方をする、という意味の「随縁真如」という言葉があるようで、仏教の教えがお寺の名前になっているようです。創建については不詳ですが、もともとは関村(現在の港南区笹下)の東樹院の末寺で、荒廃していましたが、江戸時代のはじめの正保年間(1645〜48年)に、日蓮宗の僧・本明院日意上人が来て、この寺を再興したと伝えられています。本尊は三宝祖師で、3つの宝とはお釈迦様の「仏」と、南無妙法蓮華経のお題目である「法」、そして祖師日蓮の「僧」。この三宝が本堂正面に祀られています。
【随緑寺の庚申塔】
本堂左手にあるイチョウの大木の下に、元禄5年(1693)銘の笠付型の庚申塔があります。
○「いっぺい(一杯)水」(上中里町812付近)
その先の上中里交差点を左折して行くと、すぐの十字路を横切る道が能見堂緑地から下ってきた「かなさわ道(鎌倉道)」になります。ここを左に入って、大岡川沿いの道を行くと右手崖下に「いっぺい水」があります。「いっぺえ」とは一杯の方言だそうで、昔は馬方さんが一休みする場所でした。
○「栗木向坂の庚申塔」(杉田8丁目)
道なりに進んでいくと、笹下釜利谷道路の栗木交差点手前にある向坂バス停に出ます。バス停の先を右折して向坂への車道を上って行くと、すぐに小道となり丁字路に「栗木向坂の庚申塔」があります。小さな屋根で覆われた庚申塔群（４基）があり、庚申塔には正徳3年(1713)、享保元年(1717)の銘があり、右から2つ目の中里念仏講中碑は道標になっていて、「左 新まき道」「右 杉田道」とあります。
○「かなさわ道案内板と馬頭観音塔」(栗木32)
栗木交差点を北に向かい、根岸線（昔は桜大線といった）のガードをくぐり、栗木町バス停のある信号の先を右折すると、右側に「かねさわ道」の歴史を紹介する案内板(パネル)があります。東海道保土ヶ谷宿の分岐点から金沢への道のうち、磯子区の分を紹介しています。その先、右に馬頭観音の石塔があり、古道は狭いまま、道なりに右へ左へとくねって進みます。
○「妙蓮寺」(田中1-21)
三井杉田台団地入口の道を横切ると、先の入口に先ほどと同様の「かねさわ道」の案内板がありますが、中身は同じのようですが古くなっていて読めません。左手に大岡川が見えてくると、右側に「妙蓮寺」へ上がる石段があります。
【妙蓮寺の庚申塔】
石段の途中の左側に、享保18年(1733)銘の庚申塔があります。
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