いま獅子文六「娘と私」の後半。
昨年、山田風太郎の戦中派日記シリーズを読み尽くしたが、山田だけでなく僕が好きだった、 または今でも好きな物書きである三島由紀夫も吉本隆明も橋川文三もみな戦中派なのに兵隊に取られた経験がない!
これは偏っているので、阿川弘之の初期の小説の後、火野葦平の兵隊物を何冊か読んだ。中でも最初の「土と兵隊」が最も印象深い。外国も軍隊も知らないごく普通の日本の男たちが、中国大陸に送られて一人前の皇軍兵士になっていく過程がありありと描かれているから。他の兵隊物は、軍隊生活や戦場や掠奪、行軍が当たり前になっているので。
他にも小説でもノンフィクションでも戦争物は読みきれないだけあるが、戦時中でもそれほど戦火がなかった地方や時期、さらには戦前の日本ももっと自分なりの実感を持ちたい、と思うようになった。
獅子文六の「悦ちゃん」では、昭和11年に書かれたのにその年の2・26事件は出てこないが、「娘と私」は戦前から戦中、戦後の日本の時代背景が描かれている。
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