鬼婆

南北朝時代、野原の家屋に暮らす姑と嫁が迷い込んできた武者を殺して甲冑や刀などを奪って生活費の足しにする日々を過ごしているところへ、出征した近所の若者が帰郷する。姑にとっては息子であり嫁にとっては夫である男は戦から戻らず命を落としたようで、そのうち若者と嫁は互いに惹かれ合い密会を重ねる。そんな状況を知った姑は嫉妬に狂い、鬼の面をかぶって若い男女を脅す。
安達ヶ原の鬼婆伝説を下敷にした恐るべき人間ドラマ。ホラー映画として名高く、海外でも評価の高い新藤兼人監督作。ホラー映画ということで以前から興味はあった映画で、鬼婆が旅人を襲う恐怖を描くのかと思っていたがそうでもなく、鬼婆にも恐怖の現象が襲いかかる。
別に怖くはないけどストーリーが滅法面白く、極限状態の人間ドラマとして見応えがある。生と性を深く描くところは新藤兼人の得意とするところ。実に面白い映画だった。