ももたろうず。七話。
おじいさんは、洞窟の入り口から差し込んできた月明かりに照らされた大きな桃を、じーっと見ていました。
小刻みに揺れているように見える桃。
どのくらいそれを眺めていたでしょうか。急にぐぐぐっと何かが押されるような音がしたかと思うと、おじいさんのかじったところから赤子の足がにゅっと出てきました。
おじいさんは、あまりの衝撃に、その場でしりもちをつき、そして、わらわら震えだしました。
桃から出た足は、もぞもぞしながら、そのまま突き出たままでした。
どのくらい時間がたったでしょうか。おじいさんは、赤子の足が出た桃に近づき、そっと足に触ってみました。
それは温かみのある足でした。
おじいさんが、その足を両掌で包み込むと、穴の脇から桃が避けて、赤子の体が出てきました。そして大きな声で泣き出しました。
割れた桃の上で泣いている子の足をつかみながら、おじいさんは、ぼーっとそれを眺めていました。
ああ、あああ、赤子じゃ。
急におじいさんは言いました。
桃の中に赤子がおった。何ということじゃ。どうすればええんじゃろうか。
手を離したおじいさんは、赤子の顔を覗き込みました。赤子も目を開けおじいさんの顔を見つめました。
なにか食べさせるものはないか。
おじいさんは思いましたが、洞穴には大きな桃しかありません。
おじいさんが、桃とちぎって、赤子の口に持っていくと、それをちゅばちゅば吸い始めました。
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