ももたろうず。五話。
夜が明けはじめてころ。流されたおじいさんは、浅瀬で目を覚ました。
ここは、どこなんじゃろうか。
体を起こしておじいさんは、そう、つぶやきました。
石がゴロゴロところがっている浅瀬。からだの節々がいたい。なんとか起き上がったおじいさんが、目を凝らして回りを見ると、少し先に大きな桃が転がっていました。
おお、これは、婆さんがいうとった桃かもしへん。
おじいさんは、桃に近づくと、そっと触れてみました。濡れて、少し表面が汚れた桃でしかたが、熟れた桃の甘い匂いがしました。
どうしたもんかのう。
山にかこまれたそこは、石だらけ。前の川は、緩やかに流れていました。
とりあえず、誰かおらんか探してみようか。
おじいさんは、ゆっくり、ゆっくり歩き始めめました。少し離れたところに手頃な洞穴を見つけました。
中を覗きこむと、人一人休むには、丁度よい広さ。
おじいさんは、川に戻ると大きな桃を担ぎ、洞穴に戻りました。
洞穴に戻ると、それまでの疲れが出たのか、うとうとと眠ってしまいました。
空腹で目を覚ますと、すでに夜になっておりました。
腹がすいたのう。桃を少し食べてみようか。
恐る恐る皮を向いて、桃にかじりつくと、それは今まで食べたことのないほどの甘さ。夢中で食べ始めましたが、二口ほどかじっただけて、不思議なことにお腹は一杯になり、それ以上は食べられませんでした。
これはまた不思議な桃じゃ。
おじいさんは、そう思って、立ち上がると、これまた不思議、寝る前に痛かった体の節々がすつかりよくなっていました。
おじいさんが洞穴から外に出ると、まん丸い月が浮かんでました。
じいさんとばあさんは、きっと心配しとるじゃろうな。
そう思いながら、月を眺めていると、洞窟の中で、何かが動く音がしました。
恐る恐る洞窟に戻ると、その音は、桃から聞こえてくるのでした。
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