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2020年12月02日21:34

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映画日記『いろは囃子』

2020年12月2日(水)

『いろは囃子』(1955年)
監督:加戸敏
東新町・名演小劇場

市川雷蔵祭より未見の1本。

もとは木場の材木問屋の跡取り息子でありながら、やくざ者に身を持ち崩してしまった平太郎(市川雷蔵)が、悪仲間にさそわれ押し込みに入ったが失敗し追われていたところを、矢場女(=娼婦)のおせん(山根寿子)に助けられ匿われることになる。
ふたりは相思相愛になるものの、いずれも惨めな身上ゆえ、将来はお先真っ暗。
生きていてもしかたないと、世をはかなんだ二人は川に身投げし心中をはかる。
命をとりとめた平太郎は木場の実家に戻され、堅気の暮らしを送ることになった。
きっとおせんはもうこの世にいない。
平太郎は幼い頃からの許嫁であるいとこのお菊と一緒になり、家業を継ごうと決心した。
しかし、おせんもまた船頭をしているやくざ者の藤兵衛(菅井一郎)に命を救われ、そのまま彼の女になっていたのだ。
そんなおり、お菊に横恋慕していた大店(おおだな)の馬鹿息子が彼女をかどわかしてしまう。
かどわかしと見抜いた藤兵衛とおせんはお菊を救い出すと同時に、お菊の実家へ出向き法外な金額を強請り始める。
そして、その様子をうかがっていた平太郎は・・・・

世の中の底辺で、うごめくように生きてきた男と女の出会いと別れを描いたメロドラマ。
どうしても浮かびあがることのできないおせんと平太郎に、なんともやるせない気分になる。
明朗快活な雷蔵もいいが、本作のような悲劇的な主人公が彼の真骨頂だ。
彼の映画を見るたびに、37歳という死がほんとうに早過ぎるとおもう。
この“37歳”を今に当てはめると、山田孝之、鈴木亮平、松田龍平になる。
相手役の山根寿子は戦前から活躍している女優さんで、ネットで検索したら雷蔵より10歳も年上だった。
新東宝版の『細雪』(1950年)では三女役をしているぐらいだから、上品な役も出来るのだが、本作では長い苦界暮らしで、すれっからしになってしまった女の哀しみを、見事に体現していた。
舞台のひとつが木場ということもあり、大量の材木がぷかぷかと浮かんでいるシーンが壮観だ。
あれがオープンセットだったとしたら、ものすごい労力だ。


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