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2020年05月31日22:34

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映画日記『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』

2020年5月31日(日)

『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』(2020年)
監督:エミール・クストリッツァ
東新町・名演小劇場

ホセ・ムヒカといえば、ずんぐりむっくりとした体型に、ちょびひげを生やし、いつもニコニコしている小国の大統領だ。
大統領といっても、世界にはトランプみたいな人だけなく、色々な大統領がいるなあ、というぐらいの認識しかなかった。
正直、まったく興味はなかったが、撮ったのがエミール・クストリッツァと知って、見ることにした。

まず、「小国」というのが、太平洋のどこかにある小さな島国だろうと想像してたら、映画を見て南米のウルグアイであることを初めて知った。
といっても、目の前に南米の白地があったとしても、ウルグアイを指さすことはできない。
そのイメージから、清貧の好々爺が、ひょんなことから大統領になってしまった、ぐらいにおもってた。
清貧の好々爺であれば大統領になれるのだったら、いちおう清貧の好々爺である私にだって大統領になれそうだと、のんきなことを考えていた。
ところが、映画を見たら、おのれの浅薄さをつくづく思い知ることになる。

ホセ・ムヒカという人は、筋金入りの活動家だった。
1960年代〜70年代の若いころは、今風に言うと、極左過激派ゲリラの一員として、資金調達のため、武装し銀行を襲撃したこともあるという。
「銃を持って銀行に押し入るのは最高の気分だ」みたいな言葉が、あっけらかんと彼の口から語られる。
当時の軍事政権を敵にまわした闘争の代償として、彼は数え切れない銃創と、獄中で13年間を過ごすことになる。
しかし、この獄中13年が、ホセ・ムヒカをより強靭な精神をもった人間へと成長させることになった。
彼は、「社会を壊すことは簡単だ。しかし、作ったり、やり直すのはむずかしい」と言う。
破壊工作者を経て、貧困層のための政策を推進する為政者になるという、ある意味数奇な人生を歩んできたホセ・ムヒカの、重い言葉だった。

彼の奥さんが、ルシア・トポランスキーという人だった。
ホセ・ムヒカのゲリラ仲間で、当時は文書偽造のプロだったらしい。
彼女の若い頃の写真が出てくる。
やせて、ちょっと『俺たちに明日はない』(1967年)に出てくるフェイ・ダナウェイっぽい風貌だった。目に反逆心がこもっている。
そういえば、私の学生時代にも、政治的でピリピリした感じの女性がいたことを思いだした。
そんな、かつては先鋭的な雰囲気だったルシア・トポランスキーも、いまはホセ・ムヒカと同じように、ポッチャリとした気のいいお婆さんだ。
なじみの酒場で、ほろ酔いかげんのふたりが、いっしょになって哀愁をおびたタンゴのメロディを口ずさむシーンで映画が終わる。
本作は、激動の時代を生きぬいてきた、男と女の物語でもあった。



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