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2020年05月25日08:05

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■7日間ブックカバーチャレンジ 5日目

■7日間ブックカバーチャレンジ 5日目

●「飢餓海峡」(水上勉:著)

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「飢餓海峡」は大学生になって読んだ。
内田吐夢監督の映画のことは知っていた。
しかし、「飢餓海峡」を手にしたのは映画とは関係ない。
水上勉が水俣病を題材にした「海の牙」という推理小説を読み、その流れで「飢餓海峡」になった。
内容については、いまさらなので省く。
どうして「飢餓海峡」が、お気に入りの1冊になったかというと、雷電という地名に惹かれたためだった。

雷電(らいでん)は冒頭に出てくる。
物語の発端となる質屋一家惨殺事件の捜査中に、刑事たちが立ち寄る朝日温泉の場面に登場する。
ひとりの刑事がぽつりという。
「はじめてきてみましたが、ずいぶんと淋しくて恐ろしいところですな」
雷電が登場するのはわずかなものだが、寂寥とした情景描写と、「らいでん」という言葉のひびきに捕らわれてしまった。
さっそく地図を開いてみたら、積丹半島を南に下った、鉄道も通ってない辺鄙なところだ。
遠い北海道でもあるし、簡単に行けるところでない。
生涯行くこともないだろうとおもい、雷電のことは心の奥底にしまい込んできた。
本を読むと、テーマや主張といった大事なことだけでなく、いわば小事がいつまでも心に残ることがある。

実は、去年の夏、退職を機に北海道旅行へ出かけた際、その雷電に行ってきた。
バスから降りると、目の前に廃墟となったホテルがある。
山道を登っていたら、小説にも出てきた朝日温泉への案内看板に「CLOSE」とある。
秘湯として有名だった朝日温泉は、10年ほど前の豪雨被害で、なかば廃業の状態らしい。
雲行きがあやしくなってきたので、バス停に戻った。
人通りもなく、ときおり車が通り過ぎていく。
そのうち小雨が降り出し、夕刻のため暗くなってきた。
結局、帰りのバスが来るまでの1時間ほどを、ひとりで過ごした。
ほんとうに淋しいところだった。

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