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2020年04月05日22:27

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映画日記『ソン・ランの響き』

2020年4月5日(日)

『ソン・ランの響き』(2020年)
監督:レオン・レ
東新町・名演小劇場

舞台はベトナムのとある大都会。ときは1980年代。
まだ携帯電話はなく、テレビゲームがピコピコと音をたてていた時代。
京劇のようなベトナムの大衆演劇の芝居小屋に、借金の取り立て屋のユンがやって来る。
ユンは暴力も辞さない取り立てで、あちこちから恨みをかってる孤独な男だ。
ユンは一座の親方に、「借金の返済ができないのなら、舞台衣装を燃やしてしまうぞ」と脅した。
そこへ一座の若きスター、フンという名の美青年が現われて・・・・

指一本ふれないラブシーンといえば、『緋牡丹博徒 お竜参上』の雪降る今戸橋での藤純子と菅原文太を思いだす。
指一本ふれない愛なんて、現実には存在しない。
いや、存在するかもしれないが、私個人の乏しい恋愛経験からすると、それは片思いだ。
なんだかわけの分からないことを書いてしまったが、さまざまなしがらみの中で、「アイ・ラブ・ユー」のひとことが言えず、指一本ふれないまま消えていく恋というのは、映画や芝居がもっとも得意とするところだろう。
言葉(=セリフ)でなく、“指一本ふれない”という絵に、情感があふれ出す。
とにかく、見る者は指一本ふれないことに、グッとくるのだ。
そして『ソン・ランの響き』は、男と男の指一本ふれないラブストーリーだった。
ということで、悲恋の映画であることがバレてしまった。
そして、迎えるラストシーン。
雪降る今戸橋でなく、雨降る芝居小屋の前の雑踏の中で、男と男の秘めた恋が消え、流れていった。
ふたりの恋が消えなければならない理由も含め、とても哀しいラストシーンだった。

『第三夫人と髪飾り』に続く、ベトナム映画の良作。


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