2019年9月18日(水)
『ラスト・ムービースター』(2019年)
監督:アダム・リフキン
今池・名古屋シネマテーク
ひとり暮らしのしょぼくれた老人、ヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)は、かつてハリウッドのドル箱スターだった。
路面のカフェテラスで古くからの俳優仲間と昔話に花を咲かせていても、誰も彼のことをふり向きもしない。
そんな彼のもとに、ナッシュビルの映画祭から映画功労賞受賞の招待状が届いた。
デ・ニーロやイーストウッドも受賞しているというので、出席することにしたのだが、どうも様子がおかしい。
ナッシュビルまでの飛行機はエコノミー、空港に着いてみるとリムジンどころか、ボロ車に乗った小太りで意地の悪そうなパンク娘がひとり、出迎えに来ているだけだった。
映画祭の会場に行って、さらに愕然となる。
会場といってもホールや劇場でなく、街なかのバーだった。
それは映画祭というより、ボンクラな映画オタクたちの、自主上映会だった・・・・
1970年代から80年代にかけて、絶頂期のバート・レイノルズを知っているので、冒頭の老いた彼の姿に、しんみりとなってしまった。
彼の『キャノン・ボール』は、数少ない私のデートムービーの1本だった。
バート・レイノルズのいわばセルフ・パロディ。
老いた身では、もうアクションはできない。
スクリーンの前の観客を楽しませるには、自らの老いを、笑いにするしかない。
バイアグラねたや、小太りのパンク娘との掛け合いが楽しい。
パンク娘を演じたアリエル・ウィンターが芸達者だ。
出だしではなんて嫌な女だろうとおもっていたら、ラストに近づくにつれ可愛くなる。
ラストが、まるでバート・レイノルズ自身による、私たちへの別れの挨拶だ。
私を含め、この映画を見た世界中の多くの人々は、ラストカットのあなたの笑みをけっして忘れることはない。
バート・レイノルズよ、以て瞑すべし。
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