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2020年05月29日21:42

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ディーノ・ブッツァーティ「神を見た犬」

コロンブレというサメに見いられ逃げまくり、もう逃げられないと覚悟した死の直前に、サメは真珠を渡そうとしていたのだと知る「コロンブレ」
この話は堀江敏幸が「河岸忘日抄」で取り上げていた。

聖者と生死をともにしたい犬に見張られている幻想に陥り、日々を真面目に生きようとする村人を描く「神を見た犬」

7階建ての病院に入院した男が、病状は軽いと言われながら、じりじりと階数を下げられてゆく(1階は死が近い重症)男の焦燥を描く「7階」

死神にせかされて、人類のために破滅への発明を達成する「アインシュタインとの約束」

ホテルの廊下でトイレ使用を躊躇し合った挙句廊下で眠ってしまった朝、同じ意図で眠っている者を何人も見つける「グランドホテルの廊下」

老いた山賊が最期の賭けの末にかつての山賊たちの亡霊に迎えられる「護送大隊襲撃」

仕立て屋から届いたスーツのポケットから次々に紙幣が出てくる、その金額分だけどこかで犯罪が起きる「呪われた背広」

米ソの最終兵器は、敵の考えを替えるガスで、お互いに撃ち合ったために立場が逆になった冷戦を始める「秘密兵器」

週に1人世界の要人が急死してゆき、その後世界平和が訪れる「1980年の教訓」

告解を受ける神父の許に、宗教者としての身分が上がるたびにその身分で呼ばれることに喜びを見出す自分の罪を告白しに来る司祭。神父が老い最後の願いにヴァチカンを訪ねた神父は、そこにその司祭を見出す「驕らぬ心」

ドイツが勢力を傾けて製造し、敗戦とともに用済みになり、残った乗組員とともに幻の艦隊に沈められる「戦艦<死>」

おおきな握りこぶしが空に忽然と現れ、懺悔に行列を作る人々の前で、私はどうなるのかと司祭がつぶやく「この世の終わり」

どれも、自分の人生を点検してしまうような恐怖と安堵を誘う。
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