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2019年09月23日13:48

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プリーモ・レーヴィ「休戦」

終戦後、収容所から故郷トリノに帰還する困難の10か月。
彼らを解放するロシア軍は「正しいものが他人の犯した罪を前にして感じる屈辱感」に満ちている。
「自分の善意は無に等しく、世界の秩序を守るのに何の役にも立たなかった」からだ。「人間の正義がそれを根絶するなどと考えるのは愚かなことである。それは無尽蔵の悪の根元なのだ」と、レーヴィは書く。

故郷への旅の途中の駅で、好奇心をむき出しにした地元のポーランド人に囲まれ、居合わせた弁護士にイタリア人の政治犯だと紹介され、抗議する。
弁護士は言う。
「その方があなたにとっていいからだ。戦争はまだ終わっていない」
レーヴィは「自由だと感じた温かな波が逆流して私から離れていくのを感じた。私は突然年老いて、生気を失い、人間のあらゆる尺度を越えて、疲れ切っている自分を発見」する。
「破壊されたウィーン、屈服させられたドイツ人を見ても、いかなる喜びも感じられず、むしろ苦痛を感じ、取返しがつかない決定的な悪が存在するという、のしかかるような重苦しさ、その悪は世界の胎内の奥底に不治の病のように巣くい、未来の災悪の種になる」
感覚を持つ。
そして、「知らなかった」と言うドイツ人(支払い不能な債務者の群れ)を、理不尽とわかりながら、許すことが出来ない。
無名の彼らの中に「知らないことはあり得ず、忘却は許されず、答えないことは出来ないものたち」を探し求める自分に気づき、しかし「それはむなしく愚かな企てだった。なぜなら彼ら(収容所の支配者たち)ではなく、別のものたちが、少数の正義にかなったものたちが、その代わりに答えるはずだったからだ」
つまり、罪人はそれを罪とは考えないからこそ罪を犯すのだから、その理由を問うても意味がない、という諦念なのか。

むろん、10か月の旅は肉体的にも困難だった。病と消耗で力尽きる者もいた。
レーヴィはトリノに帰りついた後、2重夢をみるようになる。
「穏やかでくつろいだ雰囲気で、うわべは緊張や苦悩の影もない。だが私は深いところにかすかだが不安を感じている。迫りくる脅威をはっきりと感じ取っている。夢が進んで行くと、背景や周囲の状況、人物がみな消え失せ溶解し、不安だけがより強く明確になる。今ではすべてが混沌に向かっていて、私は濁った灰色の無の中にただ一人でいる。すると私はこれが何を意味するかがわかる。いつも知っていたことがわかる。私はまだラーゲル(収容所)にいて、ラーゲル以外は何ものも真実ではないのだ。それ以外のものは短い休暇、錯覚、夢でしかない。こうして平和の夢が終わり、まだ冷たく続いている別の夢の中で、よく知っている、ある声が響くのが聴こえる。尊大さなどない、短くて、静かな、ただ一つの言葉、びくびくと待っていなければならない、外国の言葉だ。「フスターヴァチ」、さあ、起きるのだ。
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